L K 「SOSの子守唄」
今度は、ケイが消えてしまった。
「どうして? どういうこと!!!」
エルはこう叫んだ後、今まで感じたことがない恐怖に襲われた。
「ケイもホロキャラクターだったの? 一体、何重にホロプログラムを起動していたの?」
コンピューターに尋ねた。
『最大7重に展開されていました』
「ホロプログラムの中に、ホロプログラムがそんなに。どうして? 一体いつから?」
『72年8か月と2日、7時間46分23秒前です』
「ななじゅう・にねん・・? そんな昔から? どういうことか分らない。私は一体何をしていたの?」
怖くて涙が流れ出した。涙など流したことなかったはずなのに。
「全ホロプログラム終了!」
ラボのホロチャンバーは消え、そこは誰もいない、物音ひとつしない、別の古いホロチャンバーの中だった。
「私はずっと、仮想現実の中で生きていたというの?」
ここはどこ? 今はいつ? むしろ私は何!?
「コンピューター、鏡を見せて!!!」
目の前に大きな姿見が現れ、背筋が凍る思いがした。
・・・そこに映っている私は、腰の曲がった老婆だった。
完
作品名:L K 「SOSの子守唄」 作家名:亨利(ヘンリー)