L K 「SOSの子守唄」
「私一体、どうしたの?」
ケイは次のように説明した。
「エルの船は、なんとかこのアップルに、帰還することが出来ました。あれだけの損壊にもかかわらず、エルは奇跡的に生還出来たのですよ」
「アッシュがブラスターパックを点火する直前、エルは船のスラスターを、無理やり全開で噴射していたでしょう。その時、難破船から移植導入していた“エネルギー防壁”が船体剛性維持のため、自動的に船全体に展開され、爆発から守ってくれたのです。しかし、船内に隠されていたブラスターパックは、エルのすぐ側で爆発しました。キュウはエルに抱きしめられて損傷は少なかったようですが、エルの体は修理不可能なほど破壊され、意識を失くしてしまったそうです」
「その後、キュウがストレージケースにいたジェイを起動して、彼にエルを助けてほしいと泣きながら頼みました。ジェイは船内の惨状を見て状況を把握し、無表情でエルを再起動しようとしましたが、目覚めないあなたを、そのままの状態で、タックと共に人工睡眠キャスケットで保存してくれました」
・・・その後、ジェイとキュウは協力して、船のコクピットを、難破船から流用した部品で、3ヶ月かけて稼動出来るまでに修復し、エルが持ち帰ると指示していた格納庫モジュールを分離、曳航して、探査船を手動で操縦しながら、彼らはまだ見ぬ惑星アップルを目指したのだった。
そして、エルの船は12年かけて、ようやくこの星に辿り着いていた。
作品名:L K 「SOSの子守唄」 作家名:亨利(ヘンリー)