L K 「SOSの子守唄」
最終話 記憶
目が覚めると、いつも耳鳴りがする。
体が冷えているわけではないのに、暫くは足を思い通りに動かせない。
エルは目が覚めた。
また、人工睡眠から開放されたのだと思った彼女は、目を瞑り、暫く呼吸を整えていた。そして彼女は、周囲がとても静かだということに気が付いて、目を開けた。そこは、見たことがない、明るく清潔な部屋の中だった。
記憶を辿ってみたが、再起動後の脳はシステム最適化に時間がかかり、暫くは状況がつかめずにじっとしていた。その後、体を起こそうとしてみたものの、やはり彼女の体は思うように動かなかった。首を伸ばして、部屋の中を見渡していると、ドアが開いて誰かが入ってくるのが分かった。
「エル!」
その声は、キュウだった。
「キュウ。大丈夫だったの?」
「目が覚めたんだね。よかった!」
キュウはとても嬉しそうに、大きな声で叫んだ。彼は大きく成長していた。
その声を聞いて、また一人、誰かが部屋に入ってきた。
「エル。私が・・・私が分かりますか?」
エルは暫く黙って、彼の顔を見つめた後、
「ケイ、年を取ったわね」
そして、たどたどしく両手を伸ばして、ケイを力いっぱい抱きしめた。
作品名:L K 「SOSの子守唄」 作家名:亨利(ヘンリー)