L K 「SOSの子守唄」
第一話 ミッション
私がこのミッションに選ばれた理由は、感情がない女だから。
生まれた時から、まったくの感情を持っていなかった。私自身、大勢でいるより、一人でいる方が性に合っていると思う。でも、有り余る時間を有意義に過ごしたいとは思うけど、船のデータベースは隅々まで見てしまって、新しい情報と言えば、私が眠っている間に受信した太陽系からの指令と、目覚めるまでの一年間に収集された星域の星図のみ。たったそれだけ。
太陽系には、私に無意味なジョークを投げかけてくれる知人は、もう生きていないだろうな。
出発当時は星間メールと呼んでいた通信手段も、今はもう古く、データ通信量に限界がある。予備の資材から3Dコピーして、船のハード面を改造してきたけど、これ以上は無理なようだわ。船の脳幹システムのアップグレードにも限界が来てしまった。
最近は、と言っても46年前からだけど、退屈という感情を理解するようになった。さらに22年前には、寂しさを感じることも出来るようになった。
人類は希望を持って物事に取り組むことが出来るが、私にはまだ『希望』というものが理解出来ない。ただ、この先80年後に到達する星系で、人類以外の知的生命体の存在を確認するという目的しか理解していない。
作品名:L K 「SOSの子守唄」 作家名:亨利(ヘンリー)