L K 「SOSの子守唄」
ジェイが動かない扉を突き破って開けた。
「すごい力ね」
「俺は本来、戦術型として設計されているもので」
「戦闘用? なんだか恐いわね」
「コワイ? 変なことを言うね。人間に危害を加えることなどない」
「アンドロイド同士では?」
「ヘヘッ、敵なら手加減はしない」
「やっぱり恐い」
「あそこだ」
人工睡眠キャスケットが8台並んでいる。供給エネルギーは落ちている様子。
「中にいるのは5名ね。生存者を確認して」
「3名死亡、この2名は大丈夫だ」
「よかった。それにこの音は、SOSじゃなく“ミュージック”ね。初めて聴いたわ」
私はその生存者見て息を呑んだ。
「一人は子供だわ」
初めてこの船を訪問した時に見かけた、通路を走っていた子供だった。
「ミュージックは、このキャスケットの中から発信されている」
「どういうことかしら? すぐに私の船に移してちょうだい。私は捜索を続けます」
「了解だ。遺体はどうする?」
「同じく持ち帰るわ」
通常、殉職したクルーは、キャスケット(棺)に入れたまま、宇宙に放置するのが慣わしだけど、こんな場所じゃ孤独すぎる。アップルに連れ帰って、昔ながらのお墓を立ててあげようと思う。
作品名:L K 「SOSの子守唄」 作家名:亨利(ヘンリー)