L K 「SOSの子守唄」
私は残り少ないエネルギーを使って減速し、回転している相手船体に速度を合わせ、周回する形で相対的静止状態を維持した。
思った通りその船は大きく損傷している。大破した船体は四方八方に散らばったはず。運よくこの船体の一部だけ、SOS音波信号のおかげで見付けられたけど、小さな船体部分は探す手立てがないわ。スキャン結果を見なくても、船の自力航行は不可能、クルーの生存も絶望的だわ。
「向こうに乗り移って、事故原因の調査をします」
「了解」
ドッキングハッチは大破していたから、ジェイと二人、宇宙服を着て泳いで行くしかないわ。
宇宙遊泳はあまり好きじゃない。音が嫌いだわ。宇宙は無音だけど、余計に宇宙服の中で体の擦れる音がして、ガサガサと騒がしい。体を動かさないようにじっとしていると、私のメカニカルな心臓の動作音が聞こえてくる。
ジェイと私は、船体に開いた亀裂から船内に入った。生存者がいるなら、人工睡眠キャスケットの中しかない。暗く浮遊物だらけの船内を慎重に進み、一番にその部屋に向かった。
「音波信号が発信されているのはこの部屋からだが、SOSではないようだ」
「何だったの?」
「規則性のあるリズムだが、俺には解からない」
作品名:L K 「SOSの子守唄」 作家名:亨利(ヘンリー)