L K 「SOSの子守唄」
私たちは直ちに、移動用に使っている着陸船でベース基地に戻った。上空からドームの中に、アラーム発報を知らせるフラッシュの点滅に驚いて、大騒ぎしている家畜たちが見えた。
ラボのコンピューターで、救難信号の発信源を探ると、新型探査船はこの星から2300億キロの彼方にあった。
「私の船の慣性航行じゃ、4年近くもかかるわね。それじゃ間に合わない。常時加速するしかないわ」
旧型探査船は衛星軌道上を周回しているけど、この星に到着して以来、メインスラスターを一度も噴射していない。
「もう28年間、動かしていない船ですから、非定常な等加速航法では、船体がもたない危険があります」
「それに加速を続けるには、エネルギーの残存量が足りないわね」
「既に、救難信号は途切れてしまいました。正確なポイントを割り出すことは困難です。現実問題として、救助は不可能だと思われます」
「いいえ、4年以上でも、生き残れるかもしれない」
「人工睡眠でですか? 船は航行不能に陥っており、エネルギー供給が断たれていると思われます。それでは人工睡眠キャスケットは、3年しか生命維持出来ません」
「そうね。その後は冷凍保存されるから、回収してこのラボに持ち帰れば、蘇生は可能だわ」
作品名:L K 「SOSの子守唄」 作家名:亨利(ヘンリー)