L K 「SOSの子守唄」
ケイは感情を理解しようとして、自分の変化について考えているようだわ。私もそうだったから分かるの。ケイを起動してもうすぐ7ヶ月になる。
この星は、恒星の周りを約9ヶ月で一周しているから、季節の移り変わりが速いの。季節と言っても、この星の公転半径が小さいせいで、温暖で雪も降らないし、岩ばかりで、景色の変化もほとんどないんだけどね。
遺伝子操作したリンゴの木は、そろそろ適応変化が完了するわ。暖かい季節が来る前に、ドームの外に移植したい。
ケイがその手順のホロシミュレーション実施を提案したけど、今回はシミュレーションなんかしないで、二人で協力して移植を成功させてみたいの。だって、この星の環境に現れる、初めての生物なのよ。それが成功したら、この星の名前を『アップル』にしようかしら。
Wwwwweeeeeeooooooo・・・・・・
Wwwwweeeeeeooooooo・・・・・・
その時、緊急事態を知らせるサイレンが鳴った。ケイは立ち上がり、コンピューターに直接リンクして、緊急事態の内容を確認している。私には無い機能だわ。
「地下の掘削に問題でも?」
「いいえ、救難信号を受信しました」
「惑星外から? まさか、この前の探査船?」
「認証コードが添付されていませんが、間違いなくそうです。いくつもの種類の緊急事態を知らせる信号が発信されています」
その探査船にも船名は無い。データ通信上、固有コードのやり取りで、認識するためだ。
作品名:L K 「SOSの子守唄」 作家名:亨利(ヘンリー)