L K 「SOSの子守唄」
第四話 救難信号
インフィニチウムの掘削作業を開始して、52日目。
地下深く31.2キロまで到達したけど、まだお目当ての層にはたどり着かない。
「ソニックドリルの周波数を、下げ過ぎなんじゃないかしら。これだけゆっくりだと、プラズマの消費量が多すぎるわ」
「シミュレーションどおりなら、もうすぐインフィニチウムの反応域に近付きます。周波数を上げると、インフィニチオン反応で分解が起こります」
「あんな爆発はもういやよ」
「では、ゆっくり地道に掘り進めましょう」
ホロシミュレーションでは、16回失敗して大爆発を起こしていた。私たちは16回も死んだことになる。でも、それはホロプログラムでの話。正確にはホロチャンバーの中の、架空のホロチャンバーでのシミュレーションの話。ホロプログラムは現実と見分けがつかないほどだけど、人体には危険が及ばないように、安全装置が付いているから、現実に死ぬこともケガをすることもないの。
私もはじめは爆発に驚いたけど、10回目ぐらいから笑えるようになってきた。ケイは何度爆発しても、表情を全く変えなかったわ。
「少しくらい笑ったら?」
「エルが死ぬところを見て、笑うことはあり得ません」
「あなたがバラバラになるところを、見飽きちゃったから笑えるのよ」
「それはユーモアか何かですか?」
「・・・何だろう? よく分からないけど、不謹慎でも笑えるものよ」
「笑いの感情は理解に苦しみます」
作品名:L K 「SOSの子守唄」 作家名:亨利(ヘンリー)