L K 「SOSの子守唄」
ラボのホロチャンバーは消え、そこは誰もいない、物音ひとつしない、別の古いホロチャンバーの中だった。
「私はずっと、仮想現実の中で生きていたというの?」
ここはどこ? 今はいつ? むしろ私は何!
「コンピューター、出口を開いて」
ホロチャンバーの壁の一部が開いた。その出口の先の暗い部屋は、高層ビルのオフィスのようだ。その部屋の窓が真正面に見えていた。
「ここは・・・」
その窓の向こうに広がる市街地の風景は、ひどく荒廃し廃墟と化したアリゾナの街フェニックスだった。
「コンピューター、このホロチャンバーだけどうして稼働しているの?」
『電源に熱核反応電池を使用しています。あと15年は稼働可能です』
私はしばらく立ち尽くした後、出口に歩み寄った。そして正面の窓ガラスに映る自分に気付いて、背筋が凍る思いがした。
・・・そこに映っている私は、腰の曲がった老婆だった。
完
作品名:L K 「SOSの子守唄」 作家名:亨利(ヘンリー)



