L K 「SOSの子守唄」
第二話 名前
名前。
気にしたことが無い。
私の船の名前さえ、考えたことも無い。
なぜなのだろう。人には必ず名前があるのに、どうして私には名前が無いの?
私が人間では無いから?
そう。私は人では無い。
W−159Kは、自分がアンドロイドであるということを自覚しているのに、私は自分が何者であるのか、疑問に思ったことなんて無かった。それはずっと、一人だったから?
「この猫には、名前がありますか?」
「名前は付けていないの」
「どうしてですか?」
「必要だと思わなかったから」
「では、この猫の存在価値は何ですか?」
「存在価値?」
「置物ですか?」
「置物?」
「部屋を飾るための置物には、名前が要りません」
「そうじゃないわ。友達よ」
「では、名前が必要です」
「・・・。そうね。考えておくわ」
私の存在価値とは、何なのだろう。
作品名:L K 「SOSの子守唄」 作家名:亨利(ヘンリー)