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ヒトサシユビの森 5.ヒトサシユビ

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何かが森の奥から近づいてきた。人だ。亮太は逆さになったまま、その人影を観察した。
ワイヤーが括りつけられた太い枝は、時折ミシミシと音を立ててしなる。
しかし簡単に折れるほど細くはなかった。
近づいてくる人に助けを求めていいものか思案していると、その人影は亮太からはっきり確認できるようになった。
袋を肩に担いだ男だった。蛭間かもしれない。亮太は助けを求めることを諦めた。
むしろ蛭間に見つかればヤバいことになりはしないかと心配になり、後先考えず現状から逃れたい一心でワイヤーを引っ張りながら、身体を揺すった。
すると、簡単に折れるはずもない太い枝が、根元の樹皮を剥ぎとりながらボキっと折れた。
ドスンと亮太は地面に叩きつけられた。
ほぼ同時に亮太の頭上に太い枝が降ってきた。
亮太は素早く身体をひねり、間一髪で太い枝の直撃を逃れた。
麻袋を担いだ男は、亮太に目もくれず速足で通りすぎていった。蛭間に違いないと確信した亮太だったが、動くに動けなかった。
その太い枝はワイヤーを絡めたまま、地面に突きささり、亮太が押してもびくともしなかった。


崖をよじのぼった。
枯れ枝を踏み、岩場を飛びこえた。
森を駆けぬけた。スカートが枝に引っかかり裂けても、かざねは構わず突き進んだ。
そして傾斜地を転がるように滑りおりた。
まるで森がかざねのために道を譲るかの如く、かざねの前に道が拓けた。
かざねは無我夢中で森の中を疾走した。