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かずきんぐ
かずきんぐ
novelistID. 61939
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懺悔

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千夏はいきなり目の前に現れた優也に驚きを隠せないようだった。
「優也くん…。目の下のクマ凄いけどどうしたの?」
俺は相変わらず千夏は良い奥さんになるような的確なところを突いてくるなと思った。
「ちょっと色々あってな。それより千夏この後なんか予定あるのか?」
正直、ちょっとどころではなかったが、そんなことより千夏に再開できた喜びの方が大きかった。
「本当は友達と出掛けるつもりだったけど、優也くんに会えたし、断っとくよ」
そう明るく、持ち前のとても可愛らしい笑顔で言ったのだった。
俺は思わず笑が零れた。
俺達は、近くの喫茶店に入り、今の状況と学校生活のことを語り合った。
俺は千夏に祖父母が母親に殺されたことや、誠が夢に頻繁に登場し、考えると頭に割れるほどの痛みが襲ってくることなどを隠さず全て話した。
その際、千夏は自分のことのように感情移入して聴いてくれた。
「そうだったんだ…。これからは私が優くんのことフォローする。だから、元気だして!」
と励ましてくれた。また、初めて優くんと俺のことを呼んだ。
だが、千夏も俺の不穏な雰囲気に気づいたようだ。
「優くんなんか変わったね。本当に大丈夫?」
「大丈夫だ。少し頭痛がするけどな」
俺は笑ったつもりだったが、顔は痛みで引きつっていたのか、千夏が心配し外に連れ出してくれた。
「ごめんな。心配かけて」
「そんなこと大丈夫だよ。それより優くんまるで別人みたい…」
そんなことをぼそっと言った。
実は俺も自分自身の変化に気づきつつあった。
頭痛に襲われる度、どんどん性格が変化しているようなのだ。
そんなことを考え始めた途端、俺はその場に倒れてしまった。
倒れる瞬間、千夏の驚愕と心配の混ざった顔が視界に入った…

どうやらここは病院のようだ。
真っ白な天井が視界に入ったからだ。
その後、千夏の心配した顔が現れた。
千夏は優くん優くんと呼びかけている。
「千夏…」
それだけの声を出すのが精一杯だった。
「あ、優くん!大丈夫?」
千夏はそういった後、俺のベットの横にある呼び出しボタンを押した。
その約1分後、医者がやってきた。
四十代半ばといったところか。男性だった。
「特に身体に問題は見つかりませんでした。ただの疲労でしょう」
医者はそう言った。
俺は一番気になることを問うた。
「脳内に異常はなかったですか」
「ありませんでした。正常な脳でしたよ」
そんな…と思ったが、口には出さず、そうですかと言って会話を終わらせた。
俺がそう言うと医者はお大事にと言ってそそくさと出ていった。
千夏は医者から俺に視線を移し、大丈夫そうで良かった。と心底安堵したような表情をした。
「やっぱり優くんが心配だよ。春休みの間だけ、優くんの家に泊まってもいい?」
俺からしたら予想外の言葉で舞い上がるような提案だったが、あまり千夏に心配はかけたくなかったため、ここは男らしく断っておいた。
だが、時期に電話をする約束をし、この日は別れた。

千夏との再会を果たした俺だったが、依然頭痛は収まるどころか酷くなっていた。
この頃になると、誠が叫んでいる言葉も聞き取れた。
「記憶の誤差だ!目を覚ませ!」
と叫んでいるようなのだが、俺には全然なんのことかわからなかった。
俺はいつしか、高校を卒業し、大学への進路を決める時期に突入していた。
時というのはこんなふうに儚く過ぎていくのだなと俺はこの時初めて実感した。
千夏との電話の回数は徐々に増え、毎日するようになっていた。
そんな時、千夏から提案があった。
「一緒に住まない?」と。
俺はもう大学生だし、千夏の言葉に無論異存は無かったため、素直に賛成した。
千夏も心做しか嬉しそうだった。
あくまでも電話だが、千夏の美しい笑顔が目の前に浮かんだ。というより、妄想した。と言った方が正しいかもしれない。
千夏との住居を整え、場所も決め、準備は完璧だった。
俺はワクワクしていたが、やはり母への恨みは消えたわけではなかった。
千夏がそのことを察してか、あまり気にしない方がいいよと言ってきたが初めて千夏の言葉を無視した。
千夏は一瞬ムッとした顔をしたが、すぐ明るい顔になり
「ねぇねぇデート行こうよぉ。久しぶりにさ」
と若干の甘えた声でねだってきた。
俺としては千夏からこれをされると断ることが出来ない。
あまりに美しいし、千夏を悲しませるのは嫌だからだ。
そして、その日は千夏とのデートを1日中存分に楽しんだ。
その夜、千夏が誰かと電話しているようだ。
俺はもう布団に入っていたが、千夏はまだやることがあるからと言ってリビングにいるのだ。
扉がしまっているため、なんて言っているのか定かではないが、別に気にする必要はないだろうと思い、その日はそのまま就寝した。
だが、次の日もその次の日も、同じ時間に電話をするもんだから俺はとうとう我慢出来なくなり、寝室からリビングに向かい単刀直入に問うた。
「おい。毎晩毎晩誰と何を話してんだよ」
千夏は怯えているようだった。
手と声が微かに震えていたからだ。
「ごめんなさい。ちょっと用があって」
「用ってなんだよ。電話変われ」
と俺は半分命令口調で電話を千夏から取り上げた。
千夏は抵抗しなかった。
「千夏と毎晩電話してるのは、どこのどいつだ」
「私よ」
俺はその瞬間違和感を覚えた。
どこかで聞き覚えがあ…
そこまで考えたところで思考は半分停止し、顔は愕然とし、言葉を失った。
驚きが強すぎたせいか、そのまま気を失いそうになったがなんとか耐え、
「まさか…」
「そうよ。そのまさかよ」
その声は確かに母だった。
俺は千夏の方を一瞥した。
千夏は俯き加減で申し訳ないという顔をしていた。
ここまで落ち込んだ千夏を見るのは初めてだった。
俺は徐々に思考が戻りつつある中で母への恨みを思い出し、
「おい!祖父母を殺ったのはお前だろ」
と乱暴な口調をあえて使った。
だが、母は全くひるまず
「そうよ。口論の末に刺しちゃった」
と高笑いするのではないかと思うような口調だった。
俺は怒りで身体が震蕩した。
「ふざけんなよ…俺の大事な人を!」
俺はそういった所で、怒りに身を任せ、電話を思い切り投げた。
千夏は驚いたせいか、キャッと叫んでいた。
俺は千夏の首筋を掴み、
「なんでだ。なんであいつと話してんだよ」
と強い口調で聞いた。
「やめて…苦しいよ…」
千夏がそう俺とは真逆の弱い口調で言ったので、俺は我に返りすまんと言って離した。
「本当にごめんなさい…あなたのお母さんに優くんを見張っててほしいって言われて…」
千夏はそこまで言ったところで泣き出してしまった。
俺は気まずい雰囲気すぎたため、慰めてやることさえ出来なかった。
俺は千夏に八つ当たりしてしまったことを深く反省した。
「千夏。ごめん。少し腹が立ってたんだ。」
と謝った。
すると、千夏は
「私が全部悪いの。あなたのお母さんに協力したのが」
とまだ半泣きの状態で言った。
「だけど、一つだけお願いがあるんだ。あいつに俺と会うように言ってくれないか」
千夏は俺を弱々しく見つめ、コクっと頷いた。

7.復讐

それから数日後、俺はあいつと会う約束をした場所にむかっていた。
作品名:懺悔 作家名:かずきんぐ