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かずきんぐ
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novelistID. 61939
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懺悔

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そして、勉強ばかりやらせた両親に改めて恨みの念を抱いた。
やはり、人生においての幸せは友達と遊んだり、話したり、恋をしたり、運動をすることなどが本当の幸せなんだなと身に染みてわかった。

そして、あっという間に楽しい時はすぎ、中学校三年になっていた。
部活ではFWを担当するようになり、誠とは更に友情を深め、親友になっていた。少なくとも、僕は誠を親友だと思っている。
勉強では今まで勉強してきたことをすべて生かし、定期テストで今まで1位以外を取った経験はなかった。
偏差値も驚異の70越えだった。
僕は祖父母に迷惑をかけたくはなかったため、勉強も引き続き、頑張り、高校は公立に行く予定だ。
しかし、一つだけ、まだ達成出来ていないことがあった。
それは恋愛だ。やはり、恋愛は苦手だ。
祖父母が必要だからといってスマホを持たせてくれたおかげで、そのスマホで恋愛について知識を深めたりした。
だが、深めれば深めるほど恋愛はわからなくなるというのもつい最近、気づいた。
経験が大事ということなのだろう。
まだ、千夏のことは好きだったのだが告白するタイミングが見つからず、結局は友達止まりだった。
この頃はもう千夏と呼んでいた。
しかし、まだ僕は諦めていなかった。
もちろん誠には千夏のことが好きということは伝えてあった。
そうしたら、誠は勇気を僕に与えてくれた。
「頑張れ!勇気を持って。てか、その前にそのネガティブを直せよ」
と言って、にかっと笑った。いかにも、誠らしい笑顔だな。と思った。僕はこの笑顔が好きだった。
そして、誠にも協力してもらい、二人で帰るチャンスが巡ってきた。
僕は何度も逡巡したが、誠の言葉を反芻し、勇気を出して告白した。
「千夏。俺実は…」
と言いかけたところで千夏に止められた。
えっ!と僕は驚いたが、千夏の言葉を待った。
「私の事好きなんでしょ?知ってたよ。私も優也くんのこと好き」
と恥じらいながら千夏の方から告白をしてくれた。
僕は嬉しさのあまり、喜悦の叫びをあげてしまった。
そして、そのまま衝動的に千夏を抱きしめた。
千夏の良い香りがした。
僕は家に帰っても興奮が冷めやらず、ご飯を食べた後、いつもなら勉強をするのだが、全く頭が回らなかったため、千夏と電話をした。
友達の時とは違う緊張感があり、ところどころ噛んでしまったが、千夏はそんな僕にも笑ってくれた。
千夏のそういうところが僕は大好きだった。

そして、そんな幸せに満ちた日々を過ごし、卒業式はあっという間にやってきた。
僕は悲しさのあまり、誠と共に号泣した。
誠とは奇跡的に、同じ高校に進むことが出来た。
誠も学力はかなり優れていた。
しかし、千夏とは離れ離れになってしまうことになった。
だが、それでも会える日は会おう。と約束を交わし、初めて唇を交わした。
僕は他の同級生と別れの挨拶を済まし、家に向かった。
その時、何故か胸騒ぎを感じた。
今まで感じたこともない胸騒ぎだ。
僕は嫌な予感がし、走って祖父母がいる家に帰った。
学校から走って5分の位置に家はある。
その5分が変に長く感じた。
そして、到着し、扉をすぐさま開けた。
そこには衝撃的光景が広がっていた。
祖父母の遺体が、並んでいた。
いずれも、心臓の当たりを刺されたようだ。
大量出血している。
僕はそのまま膝から崩れ落ち、呆然とした。
人は驚愕しすぎると、涙も言葉も出ないのだとこの時初めて知った。
だが、少しずつ脳が機能を取り戻す中で、祖父母を殺した犯人に怒りを抱き、体が激しく震蕩した。
僕は犯人がもう既に分かっていた。
それはなぜかというと、家の居間に微かにだが足跡があった。
それがあのハイヒールの足跡だった。
母の足跡だ。僕は確信した。
この時、僕の心の奥底でとてつもなく強い闇が蠢き始めた…
それと同時に俺は母への復讐を決意した。


5.人格

俺はあの事件が起きてからというもの、毎日を呆然と過ごしていただけだ。
特に変哲もない。そう思っていたが、一つだけ変化があった。
最近になり、頻繁に誠が夢に現れるようになった。
何故かは謎だが、その誠はあの優しく、温厚な誠ではない。
冷ややかな目をし、心も冷えきっている誠だ。
夢の中の誠はいつも何か叫んでいる。
だが、いつもなんと言っているのか聞き取れず、そこで夢は終了してしまう。
そのことについて、俺はあまり深く考えてはいなかった。

俺はそんなことを考えずにさっさと母親を捜索しろと自分に命令し、鉛が溜まったように重い、身体を動かした。
すでに、高校は無事合格をし、山形県の中で最高峰の学力を誇る高校に入学予定だったため、そのことについては不安は全くなかった。
そんなことより、今は母親への恨みで頭の中は埋め尽くされていた。
まず、東京の実家に向かうことにした。
そこに母はいないだろうとは思ってはいるが、可能性は捨てきれなかった。
小学生の時に来た道のりをそのまま引き返すだけでよかったので、特に迷うことは無かった。
その道のりを歩きながら、祖父母と過ごし幸せに溢れていた日々を思い出し、涙が零れた。
しかし、それと同時にあの幸せな日々を俺から奪った母への恨みは膨らむばかりだった。
思い出に浸りながら、新幹線に揺られ、気づいた時には着いていた。
東京駅を出て、小学生の時は走った道のりを今度はゆっくりと歩き、故郷に向かった。
そして、家につき、チャイムを押そうとしたがその瞬間に動作を止めた。
表札を一瞥したからだ。
そこには森でもなく、神谷でもない、全く違う名字が書いてあった。
俺はあぁこの家は売られたんだなと自分が育った場所でもあるこの家を何の感情もなく眺めた。
「やっぱりいねぇ」
と俺は呟き、そのまま来た道を引き返した。

実は明日が高校の入学式なのだ。
切り替えて通うしかないが、あまり気乗りはしなかった。
一段落したら、捜索を開始しようと思い、心を引き締めた。
その翌日、僕は中学よりも少し遠い距離である高校に向かった。
入学式を迎えたが、中学校の時とは違い、誰も俺に話しかけにこなかった。
俺が醸し出す不穏な空気を感じたのかもしれなかった。
まぁそれも仕方ないなと半分開き直っていた。
そんなつまらない入学式を終え、俺はさっさと家に帰宅していた。

平凡で退屈な高校生活を過ごしていた俺だったが、友人と呼べる人間は誰1人として出来なかった。
部活にも入らず、ただ単に授業を受け、学力だけが無惨にも向上した。
俺は勉強に呪われているのかと思うほど、勉強ばかりしていた。
誠と同じ学校だったはずだが、俺は誠と会うのを避けていた。
なぜかというと、誠のことを考えると頭が割るのではないかと思うほどの痛みが不自然に襲ってくるのだ。
その瞬間も誠が何かを叫んでいるが、依然全く聞き取れない。

6.虚像

高校二年生になった春休み。
俺は母の捜索を開始した。
東京都全体を出来る限り探し回った。
それを3日間くらい続けていたある日。
見覚えのある顔が遠くの方に見えた。
遠くからでははっきりわからないが、綺麗な顔立ちをしている。
その刹那、俺はあっ、と思わず言っていた。
千夏だった。
どこかに出かける様子だ。
俺は走って、声をかけた。
「千夏だろ…?」
作品名:懺悔 作家名:かずきんぐ