あの日、俺はヒーローを想うヒロインに恋をした。
俺は、お前が――
「「波多野~!!」」
不意に級友達の声がして、はっとしてそちらを見ると、級友達が俺に駆け寄ってくる姿が視界に入り込んだ。
「ん?その可愛い生徒は誰だ?」
「……あ、私は小糠実名子と申します」
「実名子ちゃんね、よろしく~」
小糠の手が離れる。
告白を邪魔され、俺はがくりと肩を落とす。
(まあ、また告白するチャンスはあるだろう……)
心の中で級友達を呪っていると、級友の一人が俺に笑い掛ける。
「波多野、次の試合を観に行こうぜ!」
「ん……そうだな」
「実名子ちゃんも!」
「は、はい!」
級友達が走っていく。その姿を見送った俺は、小糠と顔を見合わせ、はは、とお互いに笑った。
河原には負けたけれど。
俺の心は、晴れやかだった。
作品名:あの日、俺はヒーローを想うヒロインに恋をした。 作家名:如月