あの日、俺はヒーローを想うヒロインに恋をした。
「ギターなんて高いもの、買う訳ないでしょう!」
「そこを何とか……!」
家に帰って母さんに頼み込むと、母さんは困ったように眉を寄せた。
「とにかく駄目ですからね。欲しいならバイトして自分で買いなさい」
く、俺の高校はバイトが禁止なことを知っているくせに。
「何、お前ギターやりたいの?」
兄貴が口を挟んでくる。
「ああ、ギターってなんかかっこいいから」
「単純だな。……あ、ギターはないが、ウクレレならあるぞ」
「……ウクレレぇ?」
ウクレレってあれか?アロハ~ってやつか?
「何でそんなもの持ってるんだよ」
「なんか、面白そうだと思って買ったんだ。まあ、ちゃんと弾けてないしお前にやるよ」
兄貴はそう言って俺から離れ、ウクレレを持って戻ってくる。
「ウクレレか……」
ウクレレはギターのようなかっこいいイメージはないが、まあ、ギターより簡単そうだしいいか。
兄貴からウクレレを受け取った俺は、今日から頑張るぞ、と決意を新たにした。
その日から、俺は毎日ウクレレの練習をし始めた。
ウクレレは想像したより難しく、何度も唸りながら手を、指を動かし続けた。
練習をしすぎて手首を痛めたこともあった。しかしウクレレの音を出すのは楽しくて、俺はウクレレに没頭していった。
ある程度弾けるようになり、弾き語りに挑戦しようとも思い、歌いながらウクレレを弾いた。
初めての弾き語りはそれは酷いものだったと思う。しかし歌いながらウクレレを弾くのは楽しくて、俺は何度もその練習をした。
(小糠に……あいつに聴かせてぇな)
人に聴かせられる程に上達した俺はそう思い、ウクレレを持って学校に行き、小糠の姿を探した。
中庭に、小糠はいた。俺を見た彼女は驚いたように目を丸くする。
「波多野先輩……それは?」
「ウクレレだ」
「……ウクレレ?」
小糠がきょとんとする。
俺は真剣な表情を浮かべて、ベンチに腰掛け、ウクレレを取り出して腕に抱える。
「お前に、俺のウクレレの音を聴いてほしい」
弦に手を添えて、俺は歌いながらウクレレを弾き始めた。
歌ったのは、俺の大好きな曲。
手の届かない女性への愛を歌った曲だった。
歌詞の中の男と、自分が重なる。
ポロンポロンと心地よい音が、優しく俺の耳に届く。
始めはウクレレなんて、と思っていたが、やってみると奥深く、その音は俺を魅了した。
ウクレレの良さを小糠にも知って欲しくて、俺はウクレレを弾き続ける。
小糠への想いを、声に、音に乗せる。
歌い終わり、弾き終わると、静寂の後、パチパチと拍手の音が聞こえた。
「凄いです、波多野先輩……!私、感動しちゃいました!」
花が咲いたように笑う小糠の姿に、俺の胸に暖かなものが広がっていく。
(ああ、好きな奴に曲を聴いて貰うって、こんなにも嬉しいことなんだな)
「ありがとうございます、素敵な曲を聴かせて頂いて」
「どういたしまして。ギターもかっこいいけど、ウクレレもいいもんだろ?」
「はい、そうですね!」
満面に笑みを見せる小糠に、ウクレレを頑張って良かったなと俺は心から思った。
「そこを何とか……!」
家に帰って母さんに頼み込むと、母さんは困ったように眉を寄せた。
「とにかく駄目ですからね。欲しいならバイトして自分で買いなさい」
く、俺の高校はバイトが禁止なことを知っているくせに。
「何、お前ギターやりたいの?」
兄貴が口を挟んでくる。
「ああ、ギターってなんかかっこいいから」
「単純だな。……あ、ギターはないが、ウクレレならあるぞ」
「……ウクレレぇ?」
ウクレレってあれか?アロハ~ってやつか?
「何でそんなもの持ってるんだよ」
「なんか、面白そうだと思って買ったんだ。まあ、ちゃんと弾けてないしお前にやるよ」
兄貴はそう言って俺から離れ、ウクレレを持って戻ってくる。
「ウクレレか……」
ウクレレはギターのようなかっこいいイメージはないが、まあ、ギターより簡単そうだしいいか。
兄貴からウクレレを受け取った俺は、今日から頑張るぞ、と決意を新たにした。
その日から、俺は毎日ウクレレの練習をし始めた。
ウクレレは想像したより難しく、何度も唸りながら手を、指を動かし続けた。
練習をしすぎて手首を痛めたこともあった。しかしウクレレの音を出すのは楽しくて、俺はウクレレに没頭していった。
ある程度弾けるようになり、弾き語りに挑戦しようとも思い、歌いながらウクレレを弾いた。
初めての弾き語りはそれは酷いものだったと思う。しかし歌いながらウクレレを弾くのは楽しくて、俺は何度もその練習をした。
(小糠に……あいつに聴かせてぇな)
人に聴かせられる程に上達した俺はそう思い、ウクレレを持って学校に行き、小糠の姿を探した。
中庭に、小糠はいた。俺を見た彼女は驚いたように目を丸くする。
「波多野先輩……それは?」
「ウクレレだ」
「……ウクレレ?」
小糠がきょとんとする。
俺は真剣な表情を浮かべて、ベンチに腰掛け、ウクレレを取り出して腕に抱える。
「お前に、俺のウクレレの音を聴いてほしい」
弦に手を添えて、俺は歌いながらウクレレを弾き始めた。
歌ったのは、俺の大好きな曲。
手の届かない女性への愛を歌った曲だった。
歌詞の中の男と、自分が重なる。
ポロンポロンと心地よい音が、優しく俺の耳に届く。
始めはウクレレなんて、と思っていたが、やってみると奥深く、その音は俺を魅了した。
ウクレレの良さを小糠にも知って欲しくて、俺はウクレレを弾き続ける。
小糠への想いを、声に、音に乗せる。
歌い終わり、弾き終わると、静寂の後、パチパチと拍手の音が聞こえた。
「凄いです、波多野先輩……!私、感動しちゃいました!」
花が咲いたように笑う小糠の姿に、俺の胸に暖かなものが広がっていく。
(ああ、好きな奴に曲を聴いて貰うって、こんなにも嬉しいことなんだな)
「ありがとうございます、素敵な曲を聴かせて頂いて」
「どういたしまして。ギターもかっこいいけど、ウクレレもいいもんだろ?」
「はい、そうですね!」
満面に笑みを見せる小糠に、ウクレレを頑張って良かったなと俺は心から思った。
作品名:あの日、俺はヒーローを想うヒロインに恋をした。 作家名:如月