日付が変わった瞬間に
「何か、お願いするの?」
神社に向かう途中、霜月さんが尋ねます。
「人に教えたら 叶わなくなってしまうので、教えられません。」
真剣に、葉月さんが答えました。
「しない方が良いと思うよ。お願い事…」
秘密を明かす様な感じで、如月さんが言葉を漏らします。
「…え?」
「今日みたいな時にしても、叶えてもらえないと 思うから」
「─ 何で、ですか?」
「初詣みたいに 人出が多い時だと、誰が何を願ったのか、神様に伝わり難いと思うんだよね。」
「はぁ…」
「願いを叶えてもらう確率を上げるなら…もっとお願いする人が少なくて、誰が何を頼んだのか、神様に明確に判ってもらえる時の方が 良いと思うな」
「じゃあ…私は、今からどうしたら良いんですか?」
「…顔つなぎの挨拶しておけば、良いんじゃないかな」
「か、顔つなぎの…挨拶……ですか?」
「後で、ちゃんとお願いしに来ますからって」
「─」
「それで顔を覚えて貰えれば、熱意を感じた神様が、願い事を訊いてくれるかも知れないし。」
作品名:日付が変わった瞬間に 作家名:紀之介