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我楽多語録「散歩道」

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    自然散策

 薄雲刷くように懸る今宵の空はおぼろ月夜
 枯葉敷き詰めて土を温める虫たちの温床
 嵐黒雲を呼ぶ残月白く浮き隠れるまでの淡さ
 積雪白い足跡を運び樹林に消えるまで続く
 
 啓蟄虫のみならず人もまたこの日を待った冬ごもり
 樹海踏み入ると羊歯の床波延々と緑を燃やす
 陽射しなお冬に怯えて淡く白壁に静か
 寒椿震えるように白雪を紅い花弁に乗せている
 
 
 
 
 
 
 
 
 樹から雫がぽとりと落ちて土に穴を刻む春霞
 波砕ける浜の砂の飢え透明に足を洗う
 苦も風に流れ夜明けを拓く青い空
 白銀閃光姿を変えて朝陽が昇る
 
 海暁の光を白く撥ね返し小舟浮かべる
 森曙に小鳥飛び交って青葉ざわめく初夏
 闇夜月を求めて歩く果てしない道
 吹雪覆い隠す峠道樹林も白く煙る行路
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 崖聳え立つ波打ち返す岸は遥か下に船一つ
 夕靄穏やかに海を流れ島々に夕陽が落ちる
 庭にコスモスの花乱れる秋風心にそよぐ
 落葉カラカラ転がる毛虫食らい付く
 
 夜陰人影を隠し足音が遠くへ去る
 紅梅雪を乗せ丘の風にゆらゆら紅の色
 湧水岩肌を流れ小川となる山道愛する
 意思浮かび木葉沈む不思議
 
 
 
 
 
 
 
 
 石仏並ぶ里の道山の畑に到るまで
 海に真水の弘法水湧き出る不可思議
 紅葉たおやかに枝垂れる四季の桜脇に咲く
 青蛙乗る葉を揺らし戯れる雨の後
 
 野猿引く鋼索が渡る十津川の渓流遥か下に
 月すすき野に照る銀の穂輝く
 山川干潟自然は生きものを運ぶ
 夕映えの熊野の山に神鎮まって天の雫の虹懸る
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 熊野路は古道の岩に苔生して樹林は昼なお暗い
 大鷲舞う春の空いよいよ雪も終わり
 波がしらおしよせて湾曲に縁どる浜の砂
 紅葉こぼれる山寺は坂道の上青空の下
 
 お水取り籠松明の火が燃える二月堂は春を告げる
 雪割れの音微かに聞こえて青い
 朝霧に濡れる山影朝陽を待つ明け方の戸惑い
 霜置いて枯葉が鳴る庭を踏み冬の訪れを知る
 
 
 
 
 
 
 
 
 山道は海を臨む散策の朝陽を閃かせて
 真珠を抱きかかえる筏波に揺れて夕陽を反らす
 男滝激しく流れ女滝は静かに寄り添う
 彼岸を過ぎたというのに雪が舞う桜は既に咲き終えて
 
 ささやかな五重塔が親しみを誘う室生寺の庭
 苔生す庭の奥に石塔ぽつねんとしてたたずむ
 木蓮白く咲いて桜の紅と艶を競う春風の庭
 真夜中の月海に浮かぶ高速道は森と海の境を走る
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 断崖の遥か下に白波を蹴立てる船の往還
 岩寄せる波の砕ける音轟然と空に飛ぶ
 月は寄せては帰る片男波浜野葦辺に影を留める
 すすき野は銀の波寄せる風の原付き徒に涼しい
 
 船泊腰をかがめて繋ぐ綱に老人の黒い手が添う
 淵は青々と沈み時の流れを真空に運ぶ
 向日葵が夏の陽射しを跳ね返す真昼の暑気は鯉のぼり
 猛暑湿気を伴って体を蒸す台風の雨上がり
 
 
 
 
 
 
 
 
 風鈴音を静めた夕凪に蒸し上げる地熱
 日照り道を乾かせ湧水に群がる山道の憩い
 闇夜隠れるように歩く二人を探すライトの光
 梅雨明けて熱暑蒸し上げる足許の黄色い風
 
 荒天雲低く垂れて海うねる船怒涛を突く
 月夜誘われるように野に立つ星瞬く遠い空
 流木を乗せて下る濁流は台風の渦
 雨滴岩を走る緑の水汲めども尽きず鮎走り去る
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 蟇蛙ぎょろ目を回して辺りを確かめ土を蹴って沼に飛び込む
 老樹川岸に枝垂れて流れに握手するものと葉先を揺らす
 雨そぼ降る川に撥ねる魚網掛ける漁師
 雲雀舞い上がり菜の花揺れる空は青一直線
 
 藻屑網にかかる流れ 濁って雨後の魚群がる
 激流秘境の滝が落下する凄まじい流れ深夜を圧する
 雪解けの山裾を列車が滑るように走る菜の花を分けて
 春暖に川は温んで魚戯れるせせらぎに銀の鱗光る
 
 
 
 
 
 
 
 
 浜の一本松はどっしりと風波を凌いでいる
 闇夜は黒々と森を静めて妖怪を誘う
 蓮の花古寺の池に静かに浮かぶ菩薩
 小鳥さえずる初夏の朝愛の賛歌が樹林を渡る。
 
 深々と耽る夜に灯火一つ森から漏れる
 谷川のせせらぎが蟹を透かせている白い音
 笹舟月影を映して水を滑るゆらゆらと波
 風雲激しく走る濁流渦巻く渓谷を渡る一人旅
 
 
 
 
 
 
 
 
     人生街道
 
 運命己を波に揺らし櫂を操る健気さを求める
 生死瞬間に決まるその定めを無常の風が知らせる
 疑問差し挿まない練達の職人解釈の達人だった
 偽善それに憤激し気紛れの悪に惹かれる正義感
 
 長寿めでたさを喜べる生き方でありたい
 平凡これを守った非凡な天才がいた
 期待手の届かない宝を求めるように儚いことがある
 苦難超えること唯天地の理を知るにある
 
 
 
 
 
 
 
 
 思念どこにあっても自我付き纏う迷妄の日々
 歓喜ひたすらに天与の快楽をむさぼる無我の境地
 愛欲生命の燃焼にすべてを賭ける魂の劫火である
 風紀慎みを他人のために示す戒律である
 
 哀楽波動を繰り返し何時しか静寂へと向かう旅
 喜怒高波を超えて忘却の浜辺に到る時のざわめき
 道徳人を超えて神に近づくまことを尽くすにある
 使命己を捨て天に従う無欲の境地あるのみ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 死生一如といわれて途惑う凡庸の生の疼き
 友情頼れるようで突き放される不安が宿っている
 慕情離れがたく愛しいままに惹かれる心切なる思い
 法悦その喜びは求めてなお得難い彼岸の宝玉
 
 非情冷たく凍る月の白さを吹き入れる風の道
 恋情そこはかと心をそそり狂おしくなる悶えを壌す
 悦楽心が躍るように動く無上のものを得たように
 快楽知らぬ間に溺れるままに己を忘れる魔の時間
 
 
 
 
 
 
 
 
 無念図り難く表し難い心の真空状態
 情念ねっとりと肌に憑く油のように燃える
 涅槃求めて釈迦を夢見る菩提樹
 慈悲それを呼び寄せる捨て身の心
 
 情感滴る雫の触れ合うように微かに音色を交わす
 人生駆け続けて突然死を迎える落魄もある
 憎悪限りない破滅へと誘う導火線
 生命それは環境を選ぶこれを壊さない優しさ
 
 
 
 
 





瞬間これが発想の原点神が与える機会
自覚他人の助けを求めない自己啓発の賜物である
煩悩蔦のように絡み合って解く術は求め難い
不惑己を捨てる無心の境地唯糸筋の道

瞑想森の木陰の静かな時間我を忘れる静寂
静寂人を求めずに風韻を探す
長寿死者が笑うまで続くべしと願う生への未練
死者先祖のもとに帰る永眠に安らぎを求めて








功徳これぞ人生の価値を高める最高の自己犠牲
金満何ほどのこと喜捨せざれば地獄
抱擁心を体で伝える熱い感性の極限の表現
慟哭満たされぬ恋を深い淵に沈めた若い男女の死霊

恋路破局を恐れない情念に身を任せる狂おしい心
邪恋許しては波乱を呼ぶが制止かなわぬ怒涛
女人その性の美しさを優雅な姿態の振る舞いに託す
主婦この言葉は家庭を築くための使命を表している









作品名:我楽多語録「散歩道」 作家名:佐武寛