そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 前編
伊吹の提案に瑞は不服そうだったが、あの足音に顕著に反応できるものはいま伊吹しかいない。
「わかりました。じゃあせめて昼間は休んでください」
「うん。ありがとう」
ちょっと出てきます、と瑞が庭へと降りて行ってしまう。その背中に焦りやどうにもできない苛立ちを感じる。
「怒らせたな」
伊吹がため息をついた。伊吹に対して怒っているのではなく、原因究明がままならない状況で危険だけが迫っていることに苛立っているのだ。そんな一同を、颯馬がなごませる。
「まーまー。かりかりしちゃうのも仕方ないでしょ。昼ご飯食べてちょっと昼寝して、のんびり夜を待ちましょー」
呑気な声が、いまはありがたかった。
そして二日目の夜が来る。
<後編に続く>
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作品名:そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 前編 作家名:ひなた眞白