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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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そぞろゆく夜叉 探偵奇談11 前編

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瑞はポットから急須に湯をたしている潤子に尋ねた。彼女もまた、志帆同様に頷く。

「聞いています。住み込みで働いていますので、わたしも屋敷の一室をお借りしているのですが…。はじめは不気味でしたが…眠れないほど気にかかるということはありません」
「お兄さんの真司郎さんだけが、ノイローゼになるほど気にされていたということですか?」

そうだ、と志帆と潤子は頷いた。真司郎にだけ、強く作用しているということなのか。必ず長男は死ぬのだということを意識しているだろうから、些細なことでも気にかかるのだろうとは思うが…。瑞はひっかかった。

「真司郎さんは、ほかに何か気にされていませんでしたか?」
「この屋敷にいると、誰かに見られているようで落ち着かない、と…」
「見られている?」
「はい。昼夜を問わず、視線を感じるそうです」

視線。それは、古多賀の長男の命を奪っていくという何者かの、夜な夜な歩き回る者の視線だろうか…。

「…この家で、例えば誰か死んだとか、そういうことは?幽霊が出るというからには、何か原因があると思んですけど、心当たりは」
「ありません。そもそもこの家は、兄が結婚したときに祖母が祝いに建てた新築なのです。歴代の長男の中には自宅で亡くなってひともいるそうですが、この家ではありません」

えっ、と隣の郁が驚き、隣の颯馬と顔を見合わせている。

「新しい家に幽霊が出るの?それっておかしくない?」
「幽霊屋敷っていえば、誰かが自殺したとか、そういういわくがありそうなものだけどね。事故物件みたいな」

新築の、なんの瑕疵もない屋敷に幽霊が出る?瑞は首を傾げる。郁の言うように、解せない話である。

「つまり、この家にではなく、一族の血に憑く者ってことじゃないの?」