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霊感少女

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生き霊




生き霊とは
本来 霊魂の中でも
一番 厄介とされている


霊魂は
除霊などによって
成仏へ導く事が
可能だが


生き霊は 悪霊と同じ
怨念の塊なのだ


[別れた相手が 憎い]

など 相手を憎む心が
生き霊となり

[幸せには させない]

相手の傍から離れず
常に邪魔をしたりする

生きた人間の魂が
生きたまま霊になる

[生き霊]





だが この少女の霊に
憎悪感が ないのだ


時として
一人暮らしの子供を
心配した親の心が
波動になり届く事もある


逆のパターンも


そんな時に
察知した方が
電話をかけると

[今 電話しようと思ってた所]

などと会話をした経験は
ドラマの中だけでは
ないはずだ


それは 親子とは限らず
親友で あったり
恋人で あったり


心が 通じ合う相手で
あればの話




しかし
この少女には
雅人との接点が
見つからない



何故だろう


もし 万が一
少女が 雅人に惚れて
生き霊を 送り込んできたとなると


まず 邪魔な存在の
相楽に 危害を
加えるはずだろう



それも なく
部屋の片隅で
座り込んでいるのだ



とても
淋しそうに



四六時中
雅人から 離れない少女


目的は 何?




「頼みが あるの」
「ん?」
「雅人の友達に会わせて」
「構わないけど」
「明日」
「あ…明日?!」
「バイトの帰りに 連れてきて 出来れば 全員」


雅人は 言葉を
失った


明日 バイト先の仲間を
約束もなく 全員
連れ来いと平然と
言ってるのか



確実に 無理だ


「お前が 来た方が
早いんじゃねぇ?」


反論覚悟で
言ってみたが
意外な答えが返って来て
正直 耳を疑った


「そうね」


珍しい事が あるもんだ

強気の相楽が
自分の意見を
曲げるなど
滅多に ない



それだけ 難解な
霊なのだろうか


相楽の直感を
狂わせる程


手探り状態で
動いている



冷静な相楽が
眉をひそめて



霊感者として
しては ならない事に
相楽は 苦悩していた



【同情】



雅人と同行しながらも
部屋に 入ると
定位置の様に
部屋の隅に座る


相楽の存在に
申し訳なさそうに
佇む姿に



同情心を
くすぐる



霊魂に 同情は
ご法度だ


同情心に
飲まれたら
取り憑かれる危険性が
少なからず 出てくる



隙を 伺う様に
相手に油断させる為
霊魂が仕掛ける事も
あるのだ



夜道を 歩く女性に
声を掛けてしまう男性が
居る様に


「何処行くの?
 乗せてってあげるよ」


同情から 車に霊魂を
乗せてしまう霊体験も
少なくない



少女は 同情を
引いているのだろうか




冷静な相楽の
判断が 鈍るのは



相楽を自宅まで
送り届けた雅人が



Uターンして
帰宅する時に見せる


少女の悲し気な
表情を 浮かべるから
なのかもしれない



翌日

バイト上がり時間に
雅人が 働く
運送屋へ 出向いた


大型トラックで
輸送された荷物を
仕分けする仕事で

建物の中での
作業だった


大型トラックの荷台の
高さに合わせ
作られている建物で
仕事中の雅人達を
覗き見る事は 出来ず


仕方なく
駐輪場で 待つ事にした


高校生が メインの
アルバイト


駐輪場の中に
自転車とバイクが
ごちゃごちゃと
並べてある




仕事が 終わり
がやがやと 騒ぎ声が
聞こえ
小さな裏口の扉から
一斉に 男子高生が
飛び出して来た



一瞬にして
取り囲まれてしまい


相楽は 雅人を
見つける事が
出来ない



「彼女が来る」


馬鹿正直に言った雅人が
仲間に抱え込まれ
ふざけながら
出て来るのに
数分 掛かっていた


雅人が 慌てて
仲間を 引き離し


男どもに 囲まれている
相楽の元に 行くと



意外にも 冷静な相楽が
何も 言わず
首を 捻っていた



声を かける仲間を
完全に無視して



再度 首を捻り



雅人の顔も 見ずに


「遅い」


一言だけ 呟いた




…おかしい



相楽の勘は
外れてしまった



幼い頃 両親に注意され
直した癖が
出てしまう程

相楽は 苦い思いで
爪を 噛んだ




少女が現れた日の記憶を
手繰り寄せる



…あの日は
相楽も バイトが あり
雅人の部屋で
制服から 私服へと
着替えている途中に
雅人が 学校から
帰宅した


その時は まだ
少女の姿は
確かに なかった


互いに バイトに出掛け
先に戻った相楽が
部屋で 待っていて


雅人が 少女を連れて
バイトから戻ったはず


寄り道した可能性は
低い



やはり
バイト先で
少女の霊を
引き寄せたとしか
考えられない



まったく
雅人と 接点のない人の
生き霊で ある事は
ない


生き霊の意味を
果たさないからだ



バイト先の誰か
雅人と接点のある
誰かが 原因だと
相楽は 踏んだのだが




勘は
外れた





生き霊は
雅人の傍から
離れる事は
なかったからだ


少女の生き霊



年齢は 相楽と
あまり 代わらない様に
見える



此処で 何を してるの?



問い掛けても
返事は なかった



翌日は 休日



相楽は 家に連絡先を
告げ 雅人の家に
泊まる事にした



親公認の仲と
言う訳でもないが
毎日 相楽を家に送る
雅人の誠意は
家族にも 伝わる


信頼されているかは
別として


事情を話すと
意外にも簡単に
了承を 得る事が
出来た



喜んだのは 雅人


健全な高校生が
考える事など
ひとつしかない


一週間以上
待てを 喰らった
盛りのついた野良犬は
野犬に 変わる



相楽も 疲れていた


勘が 鈍る程



少女の目の前で


体を 重ね合い
行為に 及んだ

雅人の発光体に
包まれ
吐息から喘ぎ声が
漏れた瞬間



少女が 動いた



藍色のベールに
包まれた相楽は
少女に 念を送る



貴女は 誰?



相楽は 雅人に
しがみつき
胸に顔を 埋めた



少女の悲しみを
受け取ったからだ



貴女は 誰?
何処に 居るの?



雅人に抱き寄せられ
一段と燃えさかる
発光体に中に包まれた



……教えて



耳を塞ぎ
うずくまる少女の顔に
流れる涙の訳を
探り出す様に…


作品名:霊感少女 作家名:田村屋本舗