霊感少女 第二章 一部
教室
紀子が 不登校になって
数日。
困った事は ないが
昼食の時間 一人で食べる食事は つまらないものだ
決して クラスメートと仲が悪い訳ではないが
入学当初 名簿順に並んだ席で 前後になった由美が 一番最初に声をかけてきた
そして 由美と中学校が同じだった紀子が 加わり
いつしか 三人で行動する事が 多かった
そんな感じで 数人のグループが 出来るのだ
席換えをしても
昼食の時間になれば
自然と 決まったグループで席を移動する
相楽達は いつも
相楽の席がある 窓際の後ろの席に 由美と紀子が移動して来ていた
相楽は いつも通り
自分の席で 弁当を食べていた
由美と紀子の姿は
なかったが…
そんな時 松本と三橋が
相楽に声をかけてきた
「一緒に 食べない?」
お弁当を持って 近くの椅子を 相楽の机に並べた
「ありがとう」
相楽は 出しっぱなしの教科書を 机の中にしまうと
松本が 思わず声を漏らす
「あぁ 良かった」
丸顔の松本は 少し小太りのポッチャリとした体型をしている
「断られたら どうしようかと思ってたの」
と 満面な笑みを見せた
「だから 平気だって言ったじゃない」
と 眼鏡の三橋が 呆れ顔で松本に言った
「相楽さんって大人っぽい雰囲気あるからさ 話しづらいって言うか…」
「…そうなの?」
と 相楽が口を挟むと 慌てて
「なんとなく なんとなくよ」
と 松本は 付け足した
性格が 素直なのだろう
「まっ 神秘性は あるわね」
と 三橋が 助け船を出した
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三橋は 弁当箱を包んだ布を 開きながら
「早く 見つかるといいわね 由美」
と 気を使わず 単刀直入に話し出した
こういう時 逆に 由美の話題を避けられる方が 気まずくなるのだ
「…紀子も」
松本は すでに開いた弁当の蓋を握りしめ 弁当の中身を眺めていた
「…そうね」
相楽は 可笑しくて つい笑い声になってしまった
「聞いてもいい?」
三橋は 神妙な顔で 相楽の顔を覗き込む
「何?」
「由美って彼氏いたの?」
「さぁ 聞いた事は ないけど いないと思うわ」
「そうよね」
「何故?」
「だって彼氏いなそうだもの」
いったい どんな根拠があるのだろうか
自信たっぷりで 三橋は言った
「どうしてよ 由美なら 彼氏 すぐ出来そうじゃない」
弁当の半分をたいらげた松本が キョトンとした顔をしている
「由美みたいなタイプは 男友達と遊ぶ方が 好きなのよ」
「男友達?」
「そうよ 特定な彼氏は まだ 面倒臭いって顔してるじゃない」
確かに 一理ある
由美の男友達を紹介された事があるが 姐御肌の由美は 男友達と対等に ボーリングのスコアを競っていた事を思い出す
男友達に 加減もなく跳び蹴りをする由美に 恋愛の文字は 少なからず 似合わないものだった
「それに…」
まだ 他にも 三橋の由美イメージが続いた
「何?何?何?」
松本が身を乗り出した。
三橋は 勿体振って ご飯を一口入れて ゆっくりと噛んだ後 飲み込み
「由美が好きな人は 相楽さんだもの」
「…!!」
相楽は 思わず 飲んでいたお茶を 吹き出しそうになった
本の読み過ぎだ
それも 同人誌の類いの本 だろう
現実に 女子高で そんな話が そうそう あるはずもない
「……!マジで!?」
松本は 真に受けている
最強のコンビかもしれない
「なぁ~んてね そんなのも有りかなぁ~と思ってね」
三橋は そのまま弁当を食べ続けた。
騙され慣れしている松本も 怒るどころか 平然と違う話題に変えた
「この間の文化祭にさ 中学時代の友達が 来てたのね」
「へぇ 知らなかった」
「あたしも 家に帰ってから 友達から電話で聞いてびっくりしたもん」
「だからか」
「一応 探してはくれたみたいなんだけど 人が いっぱいで わかんなかったって」
「なるほど」
目の前で そんな会話が 続く
「でね 友達がさ 屋上に行ったって言うのよ」
「マジで?」
屋上?
「ちょっと待って それ本当?」
相楽は 二人の会話に 割り込んでいた
作品名:霊感少女 第二章 一部 作家名:田村屋本舗