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霊感少女 第二章 一部

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行方不明者




「写真あります?」


少し落ち付きを取り戻した佳恵に 相楽は 声を掛けた

「…え?」
「行方不明になられた お友達の写真」
「…あぁ あるわ 今 持ってくる」

足元が 覚束ない佳恵が 部屋を出て行った。
やや睡眠不足なのだろう

妹の消息が 解らないのだから 不安なのは当たり前かもしれない


…残念ながら
行方不明者は もう生きてはいないだろう


霊感のある相楽は
霊の声を聞く事が出来た


  「家に行け」


と伝えてきた声が 彼女の声だとすると やはり 亡くなっている可能性は非常に高い


となると…
逆に由美は まだ 生存しているはずだ

変質者に誘拐されたとしても 監禁している状態なのかもしれない


気になるのは
由美の形跡が 全くない事だ
意識を失っているのか?
だとしたら 危険な状態である事には 変わりはない

急がなければ…


再度 由美の部屋に入ってきた佳恵は また 廊下を確認してドアを閉めた

多分 家族は 佳恵の[学校が変]と言う仮説に 否定的なのだろう


「…持ってきたわ」
「お名前は?」
「園部 香奈」


写真に写っている女性は 爽やかな笑顔の綺麗な人だった
薄く化粧をした顔に 軽目のパーマをあてている
制服のリボンを小さく結び 襟元を少しだけ 開けてある
お洒落に気をつかうタイプに見えた

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「香奈さんて どんな方?」
「そうね…明るくて 成績も悪くなかったわ」
「どちらか言えば 活動的でしたか?」
「確かに 行動力は あったわね Liveとか連れてってくれたのも 香奈だったわ」

性格は 由美と似ているかもしれない


「何か 変わった出来事とか 不自然な事とか ありませんでした?」
「…思い当たらないわね」
「喧嘩とかは?」

佳恵が微かに笑った

「喧嘩は 年中よ いつも喧嘩してたわ 口喧嘩だけど」

佳恵と香奈の関係は 良い信頼関係が 築かれていたのだろう

由美と紀子の様に

「香奈さんが 行方不明になってからは 何か気になる事ありませんでした?」

考え込む佳恵が 首を捻り
「そうね…クラスメートの反応が 意外と冷たかったのが ショックだったわ」
「クラスメートが?」
「そうなの 結構 人気があったのよ 綺麗だし明るいし 学級委員にも推薦された事もあったのに…」
「それで?」
「香奈が居なくなって 色んな噂話が広がったの」
「…男関係?」

佳恵は 驚いた
「そうよ 彼氏を香奈に横取りされた子が居たらしいの」

そして 怒りが込み上げ
「絶対 ありえないわ!」
と 力強く答えた



相楽は 改めて聞き返した
「香奈さんは[才色兼備]だったって事ですね」

佳恵は 思わず吹き出した
「まさか!香奈は ドジだし…それに 物凄く音痴だったわ」
「音痴?」
「カラオケに行くじゃない 恐ろしく音痴でね 頭がおかしくなるかと思ったわよ」
と 大笑いをした

「カラオケ…か…」
「…何かあるの?」
「カラオケに行くとなると数人ですよね」
「いつも 5、6人だったかしら」
「となると 香奈さんが 物凄い音痴だった事を 知らない方も いた訳ですよね」
「そうね」

相楽は 香奈の写真を見つめ
「学校では 香奈さんを知らない人から見たら 綺麗で成績優秀な明るい女性と思われていたとしたら…」

佳恵は眉を寄せて
「……嫉妬されてた?」


「わからないけど…コンプレックスのある人から見たら 何不自由ない女性に写ったかも」
「誰かが 香奈を憎んでた…って事?」
「少なからず 男関係の噂が 流れた以上 居た可能性は 捨て切れないわね」


「……そんな…」
佳恵は 寂しい顔をした

「ごめんなさいね」
「…謝らないで…チョット悲しくは なったけど 噂が浮上した時…そんな気がした事も あったから」
「…そう」
「それから 噂が浮上した後に クラスメートの雰囲気が 行方不明になった香奈の消息に対しての興味も 失くなってしまったのも確かだから」


そして 忘れられた頃 学校側が [自主退学]を持ち出し 学校からの行方不明者の事実は 揉み消されてしまったのだろう

[自主退学]の生徒が 学校から消えた話では 学校の七不思議として成立せず 毎年 誰かが消えたとしても 根拠のない噂話にすら ならなかったのかもしれない

事実 そんな話を 相楽も聞いた事は なかったからだ

時計を見ると午後8時を回っていた

「長居してしまって すいません」

相楽が 椅子を立って頭を下げたのは 様子を見に来た由美の母親だった

「駅まで 送るわ」
と 佳恵も立ち上がった


母親の表情が 虚ろなのは
行方不明の由美の事は 勿論だが 佳恵の[学校が変]と異常な発言に 不安を抱いているのだろう

佳恵も それは解っていた


「お構いも しないで…」と 玄関先で頭を下げる母親が 微かに笑顔を作って見せる

相楽は深く頭を下げた

母親の気持ちが 痛い程
悲しく思えて 何も言葉に出来なかった



この佳恵の家族に
笑顔を 取り戻す事が
出来るのだろうか



駅までの道を
ゆっくり歩く佳恵の横顔は 由美と似ている


「由美と香奈さんの 共通点 何かありませんか?」
「由美と?」
「はい」
「…妹と友達に 共通する事って 何だろう…」
「姉妹だと 接し方も違うかもしれませんが 同じ学校に通っていた事もあるし」
と 相楽が話してる途中で 佳恵が 何かを思い出た


「…血文字の壁…」
「学校の七不思議?」
「そうよ 由美とも話したわ」
「香奈さんとも?」
「だって その話 香奈から聞いたんだもの」


  【血文字の壁】


確か 由美が 姉から聞いたと話していた


「見に行こう」と 恐がる紀子を誘っていたが 実際には 行かなかったはずだ


「見に行きましたか?」
「行かないわよ 怖いもの」
「香奈さんは?」
「香奈も行かなかったわ」


二人で 顔を見合わせた


「由美と香奈さんなら」
「……行った…かも」



探究心と行動力のある
由美と香奈



あの二人なら

  【血文字の壁】を


…………見に行く