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田村屋本舗
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霊感少女 第二章 一部

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由美




【文化祭】から数日


今だに 由美の消息は
解らない。


由美の両親が 警察に行方不明者として届けたと
担任が 淡々と告げた。


警察に協力する為に
数日間 学校の応接室で
警察による聞き込み調査が行われた。


由美の評判は 思ったより
あまり良くはなかったらしい


マイペースな由美の性格は 時として 我が儘に取られてしまうのだろう


男性関係について
色々な噂が浮上し


いつしか 由美は
【文化祭】に来ていた 他校の生徒と 駆け落ちした噂が 広がり始めていた。



一番 仲の良かった紀子は
由美が消息不明になった事を 誰よりも悲しんでいたが 警察からの聞き込みは
完全に紀子に疑いを掛けていたそうだ


勿論 紀子同様 相楽も 疑い深い質問を 投げつけられた


「連絡あるんだろ?」



警察は 駆け落ち説を
重要視している事が 手に取る様に解る


女子高生を 軽視する警察の態度と 由美を軽々しく憶測だけで 面白おかしく噂を流した仲間が居ると思うと 相楽は 逆に 由美の潔白を証明したくなった


【文化祭】当日の出来事で 由美の席には 学生鞄も弁当箱も 残されていない

多分 由美は手ぶらで登校し 昼食は 文化祭で出店している売り物を購入するつもりだったのだろう


[学校から消えた]


由美の意思でなく 誰かに連れ去られたと 証明できる証拠品は あまりにも 少な過ぎた


ただ ひとつ

下駄箱に残された 学生靴以外は


しかし 学生靴も 人目を避けて 裏口から出たと考えると 学生靴が残された事に 不自然はない


青い顔をして 俯く紀子は 警察の聞き込みを受けた翌日から 学校に来なくなった


仲間だと信じていたクラスメートの中に 裏切り者が居る事に 堪えられなかったのかもしれない


紀子の不登校から 由美の駆け落ち説は 根拠のない確信に代わり 学校側も事件を揉み消しす様に 通常の授業を再開していた


相楽は 腑に落ちない事がある


由美の性格上 噂通り男関係があったとしたら隠せるタイプではない

意識不明にでもならない限り 男の意見を尊重するより 確実に紀子に自慢をするはずだ

たった1分でも わざわざ紀子に自慢をするだろう

何よりも 紀子の反応を楽しむ由美の性格は 悪戯っ子そのものなのだから


相楽は 由美の家に行ってみる事にした。


由美の家に訪問するのは
勿論 初めてだ。


少し疲れ果てた母親に迎えられ 玄関先で お茶を断り 由美の部屋を見せて欲しいと頼み込んだ。


由美らしい部屋なのだろう

ごちゃごちゃとベッドの周りに物があるが 勉強机の上は 整頓されていて 辞典が使い易く並んでいる


相楽は 机の椅子に座り 目を閉じて由美の形跡を感じてみる

気味が悪いくらい 由美のエネルギーが伝わらず 脳裏に浮かぶ映像は 断絶された


全く 何も浮かんで来ない


…おかしい


相楽は そのまま
時に流されてみる事にした


必ず 何かある



相楽が 由美の家を訪れたのには理由があった


霊感の強い相楽は
教室で 誰かの声を
聞いた


  「家に行け」


それが 何を意味するのか
解らない


その意味を 見付に来たのだから


数時間後 由美の姉が帰宅をし 由美の部屋に 顔を出した。


「…相楽さん?」

声を掛けたのは 姉の佳恵だった。

長女らしい 大人しく落ち着いたタイプの女性だが やはり 雰囲気は由美に似ている


佳恵は 廊下を確認してからドアを閉めて小声で話し出す

「あの学校 変よ」
「…学校?」
「毎年 一人行方不明者が出るの」

相楽は 面喰らった

「学校側が いつも揉み消すのよ」

そんな事が 出来るのだろうか

「…多分 由美の事も揉み消すわ」
「どうやって?」

佳恵は 更に小声で
「行方不明者は すべて 自主退学になってるの」
と 答えた

「学校側は あくまでも 行方不明者の方から 自主退学の連絡が来たと 生徒に報告するのよ」
「…そんな事があるなんて」
「信じがたいけど 本当なの」


寂しい表情で
「私の友達も…その被害者だったから」
と 告げた


「行方不明になって…数カ月経った頃 担任に言われたわ [自主退学した]って」
溜め息をついた佳恵は
「残念だけど 行方不明になってから時間が経つにつれ 生徒達の間でも 噂は消えつつあるの あぁ そんな事もあったな…くらいに」
「…酷い」
「酷い話よね でも それが現実」


佳恵は唇を噛み締め 涙を浮かべた


「おかしい…って思うでしょ?」
「勿論」
「だから 私 すぐに友人の家に行って確認したのよ」

涙が零れ落ち 手で拭ったが 怒りが込み上げた瞳は しっかり相楽を 見据えている

「信じてくれる?」
「…はい」
「友人の家族は 学校側から出席日数の話を持ち出しされて休学を告げられたって」
「…休学」
「で その後も連絡がない場合は 在籍処分に」
「退学…ね」
「そう」

学校側が仕組んだ 行方不明者の隠蔽だ

「許せないわ」
相楽が 感情のまま言うと
一気に気が緩んだのか 崩れ落ち様に座り込む佳恵が力なく
「…どうして…由美なのよ…」
と 涙を流して泣いた


佳恵は 気を張っていたのだろう
誰かに 信じて貰えるまで 一人で 戦っていたのかもしれない

「…そうね 何故 由美なのかしら」
相楽は 意外にも冷静に考えていた


由美である理由があるとしたら いったい 何だろう

いや…由美でなければならない理由が あるとしたら

それは いったい 何?


これが あの
  「家に行け」
の答えだとしたら…


鍵を握るのは 佳恵なのかもしれない



「誰も 信じてくれないの…ありがとう…」


床に 顔を伏せる佳恵の声に あの教室で聞いた声が 重なった

声の持ち主は 行方不明になった佳恵の友達なのだろう

二人は ずっと一緒に 誰も信じてくれない思いを抱えて 苦しんでいたに違いない