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田村屋本舗
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霊感少女 第二章 一部

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ねぇ 知ってる?




「ねぇ 知ってる?」

小さなお弁当箱の蓋を閉じながら 由美が 声を発した。

今時の女子高生らしく 髪を茶色に染めた由美は 若干 足が太い事を気にしてダイエットを始め あっという間に少量の弁当をたいらげていた。


食べる量より 食べる早さに問題があると思いながらも コンビニのパンをかじる紀子は やや呆れ顔で
「何が?」
と 聞き返した。

「屋上の踊り場の話よ」
「あぁ 通行禁止の階段?」
「そうそう」
由美は 嬉しそうに紙パックのジュースを飲む。

結構 有名な学校の七不思議。

その七不思議が 語り継がれているのは 実際に 屋上へ上がる階段に通行禁止と書かれた札が下がったロープで塞がれているからだ。

流行り物に敏感な由美は 勿論 入学初日に 数人のクラスメートと噂の階段を しっかり確認済みだった。

あまり興味はなかったが 紀子も同行していた。

しかし 意外な事に その階段に通行禁止の札が下がったロープは 厳重な物ではなく 一本のロープで塞いでいるだけで 誰でも簡単に進入出来る物だった。

封印と言うより 封鎖している印象を受ける。


ただ単に 生徒達が屋上で遊ばない為の通行禁止札の様にも見えた。

噂では 屋上から飛び降り自殺をした生徒が居た事があったらしく 自殺防止の意味も含めているかもしれないが あくまでも噂なので 本当に自殺があったかも微妙な話だった。


「昨日さあ お姉ちゃんに聞いたんだけどさ」
と話し出す由美は 少し声のトーンを下げて
「血文字があるらしいよ」
と声を潜めた。


夏になると そんな怪談話が浮上しだすのだ。

紀子は 食欲を無くして食べかけのパンを袋に戻し
「また そんな話?」
と 由美を睨む

「興味湧かない?」
「湧かない」
即答する紀子に 口を尖らす由美は
「つまんないの」
とふて腐れる


どう言う訳か 由美は頭だけは良い。
由美の姉も この女子校の卒業生で 頭のいい遺伝子が組み込まれている様だ。

県で一番の進学校である この女子校に通う由美は たいして勉強をしている風には見えないが 試験の結果は いつも上位にいた。

紀子は その方が 学校の七不思議に思える


「ねぇ 相楽さんは どう思う?」
由美は 懲りずに一緒に弁当を食べていた相楽に 声をかけた。
「よしなさいよ」
答えたのは 紀子だった。


いつの間に弁当を食べ終えたのか 机の上は すでに弁当箱を片付けた相楽が お茶のペットボトルのラベルを剥がしている

同級生とは思えない程 落ちついた相楽。
大人びた横顔は 色白で綺麗な長い髪を いつも縛らずに垂らしていた

髪質が細いので 夏場でも欝陶しく見えないのは 相楽が 涼しい顔をしているからなのだろう

ペットボトルのラベルを剥がした相楽が ラベルを握り潰し
「あるかもね」
と 呟く

「ほら そうでしょ」
得意げに由美が 紀子の顔を覗き込む
「やめてよ 相楽さんまで」
今度は 紀子が口を尖らせた。

「ノイローゼの生徒が血文字を書いて自殺したんだって」
と 続ける由美が 興味津々に話し出した。
「やだってば…」
「踊り場の壁一面に 意味不明の血文字を書き殴ってさ」
「もう やめてよ!」
紀子は 机を叩いた。


あまり恐い話しは 得意ではない紀子は 本気で腹を立てていた


「相楽さんは どこまで 知ってる?」
由美は 紀子をからかうのをやめて 相楽に話題を振ると
「……さあ?」
と相楽は曖昧な返事をした

「ペンキの話は?」
と由美が口にすると ペンキと言う聞き慣れない単語に つい 紀子が口を挟んだ

「ペンキ?」

引っ掛かたなとばかりに
「そう ペンキ」
と由美が ニヤつく

しまった…と思いながらも 紀子は渋々
「ペンキが何よ」
と 不機嫌な顔で耳を傾ける

「ペンキでね 何度も血文字を消したんだけど…」
「……」
「消しても消しても 血文字が浮き出るんだって」
「……嘘でしょ?」
血の気の引いた顔で 紀子は 相楽に助けを求めた

「どうかしらね」

あっさりと答える相楽の反応を見た由美も 冷静に
「そこが 問題よね」
と 納得した


「何が問題なのよ」
一人で怖がる紀子に
「だって 誰も見て確認してないんだもん」
と 平然と由美が答えた

「あくまでも噂って事」
と 付け足す相楽が 紀子の肩を叩いた

「…じゃあ 本当にある訳じゃないんだ」
肩を叩たかれたお陰で 無意識に力んでいた肩の力が抜けた紀子が ホッと肩を撫で下ろす


「でもさ 血文字が浮き出る以前に 意味不明の言葉って方が 気にならない?」
と由美が 続ける
「浮き上がる血文字より そっちの方が 興味あるのよね」


「どっちも嫌よ」

思わず紀子は耳を塞いだ。

「ねぇ どう思う?相楽さんなら」
「どうって?」
「だってノイローゼで自殺した生徒が 死の直前に書き残す意味不明の言葉って 何を書くんだろう?って思うのよね」

由美は 意外にも真剣な顔をして

「自殺とかさ 考えた事もないからさ」
と 真面目な口調で言った

由美が頭がいいのは この探究心があるからなのだろう

確かに 遺伝子に記憶力と判断力 吸収力 そして理解力が 備わっているとしても この探究心がなければ 能力の半分も 発揮しない可能性がある


物知りは この知りたがりの性格が 重要なのだ


「だから見に行かない?」
と由美は 当たり前の様に告げた。

「絶対に嫌!」
紀子は 当然 即答する


最初から 断られる事は 解っていた由美は
「相楽さんは?」
と 的を相楽に決めていた

相楽が行くと言えば 文句を言いながらも 紀子もついてくる事も 計算に入っているのだから


しかし 相楽は無反応だった。

何処か 遠く一点を見つめている


「…相楽さん?」
何度目かの呼びかけに
やっと相楽の応答があった

「なるほど…ね」

ボソッと相楽が呟く


その行動は 由美も紀子も 見覚えがある

テレビの特番で霊能力者が よく 透視する時に見せる仕草に似ていた


そんな姿の相楽を見るたび 由美達は 「霊感少女」と相楽を呼んでいた


「…なるほどって?」
当然 聞いたのは由美


「血文字…浮き出てないわ」
と 相楽は答えた

「それは 血文字は ないって事?」
由美は 少々 ガッカリした

相楽は 由美の顔を見つめ
「行かない方が いいわよ」
と 忠告をした。