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田村屋本舗
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霊感少女 第二章 一部

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血文字の壁




〔相楽〕の通う女子高は 県で 一番頭のいい女子校として有名だった。
大学の進学率も断トツだ。 

その学校に こんな怪談話が あった。


〔馬鹿と天才は紙一重〕


秀才の変わり者も 確かに存在している


そんな変わり者の中に 精神的に 追い込まれた女子高生が居た。


名前は 沙羅。


中学生までは 学校一の才女と呼ばれていたが そんな才女ばかりが集まる進学校に入学し

突然 学年トップの座から 中の下に 格下げになった


沙羅は 初めて 転落を味わったのだ


そして
沙羅にとって 女子高は 周り全てが敵となってしまった


友達を作り 楽しいはずの女子高生生活は 最悪なスタートを切った


化粧やファッションにも無関心で 髪を後ろに束ね なりふり構わず 朝から晩まで 必死で勉学に打ち込んでいた

しかし
全国でも名の通る進学校だけに 根本的にレベルの違う優秀な生徒とは 差が開くばかりだった


自分より 遥かに遊んでいる学生が 意図も簡単に 沙羅の順位を上回る事実を 受け入れる事が どうしても出来なかった


そして 次第に 精神が音を立てて崩れて行く


成績は 面白い様に下降し いつしか 校内でも 落ちこぼれの生徒になっていた


それでも 勉強机にしがみつく沙羅の姿を見ていた両親は まさか 沙羅の成績が そんな事になっているとも知らずに 近所でも評判の天才少女と言われる事を誇りとしていた


沙羅は 幻覚を見始めた

電車に乗る事も苦痛になり 一日中 駅の改札口に立っている事もあった


何度か 駅員から通報を受けた補導員も 沙羅の着ている制服や生徒手帳を確認し 青白い顔で
「気分が悪かった」と一言 沙羅が言えば 疑われる事は まず なかっただろう


そんな好意が 逆に 沙羅の危険信号を 見逃したのかもしれない


ある日 帰宅した沙羅のストッキングに 誰かに握らた様な 血の指痕が くっきりと残った


何処で ついたのだろうか

沙羅の膝より 少し下の場所を 血まみれの指で 助けを求めるような そんな 握り方だった


幻覚が 現実の物になった瞬間 何かが 沙羅を突き動かした


家を 飛び出した沙羅が 自宅のマンションのエレベーターに乗ると 突然 ガクンと横に揺れ 異常を察知したエレベーターが 緊急停止をした


沙羅は エレベーターに閉じ込められてしまったのだ

最上階に住む 沙羅の自宅から 半階分下がった状態のエレベーター

硝子の窓からは 調度 階と階の間の鉄骨が剥き出しに見えるだけだった


恐怖で奮えながら エレベーターの緊急連絡のボタンを夢中で押したが 応答はなく 最上階に停止したエレベーターを わざわざ確認の為に 上がってくる住民もいない


降りて来ないエレベーターに 不信感を抱く住民も 管理人のいないマンションでは 通報する手間を省きたくもなるのだろう


エレベーターに閉じ込められた沙羅が 救出されたのは安全点検を終えたエレベーターが作動し一階のフロアにエレベーターが降りた時だった

設備会社の作業員が エレベーターの中を確認した時には 衰弱仕切った沙羅は 作業員から死角になる床に身をかがめて座り込んでいたらしい


エレベーターから 無表情で出てくる沙羅に 思わず絶句していた作業員達も 声を掛けるタイミングを逃してしまい

フラフラと歩く沙羅を見送ってしまった


沙羅は 制服のまま 血のついたストッキングを履いて 殆ど 無意識に電車を乗り継ぎ学校に来ていた


街灯に照らされた校庭を横切り まだ 数ヶ所の部活動に使用している教室の窓に目もくれず


沙羅は いつも通り校舎に入り込み 何も考えず 真っ暗な階段を昇り出した

真っ暗な教室が並ぶ廊下を歩き 真っ暗な教室の自分の席に ただ 茫然と座っていた



物音ひとつしない 真っ暗な校舎で まるで授業でも受けているかの様に 黒板を眺めていた沙羅が 机の中から取出したのは 刃こぼれした 錆びたカッターだった


いつか 文化祭で使用した 糊のこびりつくカッターを握りしめ 沙羅は 屋上へと続く階段を昇り始めた


屋上の踊り場で 切れないカッターの刃を手首に突き刺し 溢れ出し飛び散る血で 沙羅は 踊り場の壁に 意味不明の言葉を書き綴った


何度も 手首から流れる血を指先ですくいながら


踊り場の壁が 沙羅の血文字で埋めつくされた


そして 意識が朦朧として 殆ど無意識状態の沙羅は 屋上から 飛び降り自殺をしたのだ


〔相楽〕は 女子高に語り継がれる そんな 学校の怪談話を した



今でも 屋上に続く階段は使用禁止の看板と 厳重にロープで 柵がしてあるそうだ


肝試しとして 踊り場に行った生徒達は こぞって 壁に残された血文字を見ている

何度も ペンキで塗り潰された壁に 浮き上がる血文字


沙羅の怨念なのか
どうなのか 真相は わからない


ペンキで塗り潰された壁に
血文字が 浮きあがる事など 本当にあるのだろうか


〔相楽〕は 平然と
浮きあがり説を 否定した



そして 〔相楽〕は
当然の様に


「消された上に 新たに書いてるからね」
と 言った



まだ 沙羅の霊は
自分が 亡くなった事を
知らないらしい



まさか この怪談話に 巻き込まれるとは 想像も していなかったが……