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霊感少女  第一章

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病院裏の住民事件




僕の通う高校は 有名マンモス校で 県外から通学してくる生徒も数人いた。


僕は原付きバイクの免許を取得した記念に 県外に住む友人[伊澤]の家に遊びに行く事にした

突然 押しかけられた伊澤は さぞかし迷惑だっただろう


夏休みの真っ只中
午前中 免許センターで免許を取得し帰宅すると 相楽が友達と電車で街に買い物に出掛けていた

当然 車庫には相楽のバイクが停めてある

急いで部屋に行くと 意味なくデカイ鞄を持ってくる相楽の鞄が 置いてあり 鞄の中を引っ掻き回し 内ポケットから バイクの鍵を発見したからだ

勿論 相楽のバイクを無断で勝手に拝借したのだ


途中で伊澤に電話をかけ 昼寝を邪魔された伊澤の不機嫌な声を なんとか宥めすかし 無理矢理 目印になる大型電化店を聞き出した

電化店まで 迎えに来てくれた伊澤に愛想笑いで
「ガソリン代 貸してくれ」
と 告げたら
「死んでくれ」
と 頼まれてしまったが ガソリンを注入して貰い 奴の家に向かった

住宅街の中にある平屋の一軒家

お世話にも綺麗な家とは言えない程 古い家だった


1番奥の部屋に通され エアコンも扇風機もない 蒸し暑い部屋は 窓を開けていても風もなく 男部屋特有の異臭が漂っている

万年床の布団に俯せで寝転ぶ伊澤に 数分後には
「帰る」
と 吐き捨てていた

「何しに来たんだ」
と文句を言う伊澤に
「また来るよ」
「二度と来るな」
と言われながら バイクに乗り 伊澤の家を後にした

まさか その後 大変な事態になるとも知らずに

(頼まれても来ない)

失礼三昧で 帰宅したのだ


しばらくして
自販機で煙草を買っていると 偶然 相楽に会った


声をかけると 相楽が嫌な顔をして立ち止まる
近寄ると 後退りをして
「何してきたの?」
と さらに顔をしかめた

「免許センター」
「……」
「免許取れた」
「……」
「合格 合格」
「なんか臭う」
「…そ そうか?」

奴の部屋の臭いだろうか
慌てて 服の臭いを嗅いだ

「汗臭いか?」
「違う」

相楽は ハンカチで鼻を抑えた

「死人の臭いがする」
「…なんだそれ」
「わかんない」

相楽も不思議そうに 首を傾げ 視線だけを動かしていた

歩きながら何度も 首を捻り
「なんだろ」
と 繰り返し呟く
「まだ臭う?」
「…嫌な臭い」

家まで来ると 車庫のバイクの前で また 立ち止まりバイクを眺めている

(ばれた…か?)
血の気が引いた

相楽は さらに首を捻り
「バイク乗った?」
と聞くので
「乗ってない」
と咄嗟に嘘をついた
「…だよね」

(ばれてないのか?)

納得出来ない顔をして 家の中に入ったが
何度か 相楽が振り返り顔を覗かれる度 焦りまくるのを 必死で隠していた


しかし 平穏には終わらない

部屋のドアを開けた相楽が 勢いよく ドアを閉め 凄い形相で 固まった

「なんでよ!!」
恐ろしい顔で 睨みつける

「何処行ってきたの!」
狂気にも似た声を張り上げた

ごまかす事も出来ず 固唾を飲んで黙っていると
「馬鹿じゃないの!」
と 睨む目に涙が浮かんでいる

(いったい 何が?)

戸惑いながら 訳も解らず相楽を抱き寄せていた

冷静沈着で強気な相楽が ガクガクと震えている
まるで 氷でも抱いているかの様に 体温が尋常ではない程冷たく 夢中で相楽の体を摩った

(とにかく この場所から離れなければ)

軽い相楽を無理矢理抱え上げ 仏壇がある 祖母の部屋に逃げ込み 再度 相楽の体を摩りまくったが 貧血状態の相楽は 座っていられず 床に倒れ込んでしまった

(どうすりゃ いいんだ)

半泣きになり
パニックっている僕に
「…大丈夫」
と 握り返した手が 少し暖かくなりだした

数分後 自力で起き上がった相楽が 深く息を吐き
「大丈夫」
と 冷静を取り戻そうとしていた

「ごめん 友達の家に行った」
「…そう」
「聞いていいか?」
「…うん」
「何が見えた?」

視線を外した相楽が 口を閉ざした

「言ってくれ」

少しの沈黙があり 視線を反らしたまま

「壁中に人の顔がある」

そして
「雅人が連れて来た」
「…うん」
「限界かも」
「…うん」
「別れて…」
「……うん」

背中を摩るのをやめ 立ち上がると
「何処行くの?」
と 視線を戻してくれた

精一杯 笑い顔を作って
「荷物 取ってくるよ」
と 言うと 不安げな顔をする

「俺 お化け見えないし」

台所から 塩を入れたケースを持って部屋に入ったが 案の定 何も見えないし 何も感じる事もない

悔しくて 壁中に塩を蒔き散らし
「帰れ クソ野郎!」
と 叫んでいた

流石に 今回は懲りた

以前から 霊的現象に遭遇すると よく 相楽に
「雅人が霊を呼び寄せる」
と 愚痴られていたが
正直 冗談だと思っていた


お互い別々の部屋で姉が帰宅するのを待ち
帰宅した姉に 相楽の鞄を渡し 簡単な事情を話して 相楽には 会わずに
家を出た


相楽の自転車を 家に届け
相楽とは 擦れ違わない脇道を 徒歩で戻った


相楽の顔が見られず 逃げたかったのかもしれない

多分 顔を見たら ぶざまに泣いてしまいそうだ


それが
相楽との別れ方だ


それから 相楽は バイトも辞め 会う事もなかった




夏休みが終わり
伊澤に話してみると
伊澤は笑いもせず
「そうかもな」
と言う


伊澤の話しでは 数年前まで 伊澤宅の裏手に
病院が あったらしい

調度 伊澤の部屋の前に 霊安室があり 絶えず線香の匂いがしていたと言う

その為 子供時代は 虐められ 県外の高校を選んだそうだ


相楽は 壁一面に 亡くなられた人達の顔が見えたに違いない


「雅人が霊を呼ぶのよ」
相楽の怒った顔が浮かぶ

ちょっと可笑しくなり
「納得しました」
と 笑ってしまった



それから 伊澤が 少しだけ 明るくなった気がするので

とりあえず よし!と
しておこう


作品名:霊感少女  第一章 作家名:田村屋本舗