霊感少女 第一章
肖像画の少年
中学校の図書館に 病気で亡くなった生徒の親が 学校に贈呈した本が あった
贈呈した本には 烙印が押してあり 亡くなった生徒の親の名前が 印されていた
贈呈コーナーまであり 図書館に寄り付かない僕らでさえ 贈呈された本の存在を知っていたのだ
そして 何故か
贈呈コーナーの上に
額に飾られた肖像画が あった
また 贈呈コーナーとは別の名前で やはり 贈呈した方の名前が 刻み込まれていた
正直 中学生の僕らには
学校の怪談話として
語り継がれていた
贈呈された本は なんとなく理解出来たが
肖像画は あまり良い物ではない気がした
肖像画は 亡くなった生徒の幼い頃の写真を 絵にしたらしく 母親の膝の上に少年が座り 足を 何故かタライの中に入れている絵だった
母親が少年を片手で支え
もう片方の手で 少年の足をタライで洗っている
親子の愛でも 押さえた写真だったのかもしれない
ただ その肖像画が
薄気味悪い印象を与えるのは やはり 母親の表情が 寂し気に 虚ろな顔をしていたからなのだろう
まさに 子供が亡くなる事を 暗示していたかの様な
そんな 陰気臭い絵だった
そして 何より 少年の姿が不自然な物だった
全くと言う程 体全体の力が抜けた ダランとした姿をしていた
母親に完全に寄り掛かり
目をつぶったまま カクンと首が下がっている
見ようによっては 足を洗っている優しい母親の手を眺めている少年にも見えなくもないが…
なんとなく 少年の視線と角度が おかしいのだ
一瞬 初めて見た時
【死体を洗う母親の絵】
そんな印象を受けたから
尚更 あまり いいイメージが湧かないのかもしれない
とにかく インパクトの強い肖像画だった事は 確かだ
出来れば 二度と見たくない絵かもしれない
中学に入学してから 学校の教科で 図書館に行って調べる課題なんてのを 班ごとに義務付けられ 仕方なく イヤ無理矢理 図書館に連れて行かれて 数回 肖像画を見た程度で
記憶は 曖昧な物かもしれない
が 〔相楽〕の学校の怪談の話を聞いた時は
正直 身の毛がよだった
【肖像画】は かなり年代物の様だと言う
僕らの親の代にも その【肖像画】は すでに存在していたらしい
そして 学校側が資料として学校の歴史を 一冊の歴史本を製作していた
一冊 一万円以上する歴史本は 卒業生の希望者に販売をしていた時期があったと言う
開校50周年とか そんな感じかもしれない
〔相楽〕は 何故か その歴史本を 読む機会があったらしい
そんな本が 存在していた事すら 知らなかった僕らは 驚くばかりだった
そして 勿論 【肖像画】が贈呈された期日も しっかり記されていたと言う
【肖像画】の前で 当時の校長と贈呈した方が 並んで写る白黒写真も載っていたらしい
しかし 〔相楽〕が見た【肖像画】と 僕らが見た【肖像画】は 同じでは なかった
〔相楽〕が見た【肖像画】は…
微笑む母親に 洗っている足を くすぐったそうに照れながら 笑った少年の絵だった
「…白黒なんだろ?」
「印象が違く見えるって」
否定する僕らに 当然の様に 相楽は 反論は しなかった
「そうね 違うかも」
「だろ?」
ホッとして 肩を撫で下ろす僕らに
「また 変わるもの」
と 平然と答えた