霊感少女 第一章
忘れないでね
怪談話にも 色々ある
この話も よくある話だ
覚えたての怪談話を
得意気に 友人が語り出した。
ある夫婦には 小さい子供がいた
家族で 湖畔に出掛けた時 桟橋から貸しボートが出ていて
子供が ボートに乗りたいと言うので 家族でボートに乗る事にした
子供は大はしゃぎで 母親が注意するのも聞かず ボートは揺れてしまう
不安定なボートの上で 立っていた子供は バランスを崩し ボートが揺れた瞬間 父親が伸ばした手をかすめて子供はボートから 落ちてしまった
そして藻に巻かれた子供は湖から見つかる事は なかった
子供を亡くした夫婦は それからボートに乗る事を恐れた
数年後 その夫婦の間に子供が生まれた
子供を亡くした湖畔には 訪れる事もなくボートに乗る事もなかったが…
ある日 亡くした子供と同じ年になった子供を連れて 家族で 遊園地に行った
その遊園地には 小さなボート場が あった
子供は ボートに乗りたいと言い出し 何度 両親がボートはダメだと言っても 泣き叫ぶばかりで 言う事を聞かない
とうとう両親は根負けしてしまった
遊園地のボート場だし ボートもオールで漕ぐボートではなく 白鳥のボートになら…
その夫婦は 子供を連れボート乗り場に行く
そして 子供がボートに乗り込もうとした時
突然振り返り
夫婦の顔を見つめ
「今度は落とさないでね」
と笑った
ひぃぃぃ…
精神的にダメージがくる
怪談話だ
結末を知っていながらも
何故か 毎回 引っ掛かる
よく 突然
「お前だ!!」
と 大声を出される あの手この手の怪談話の類いだ
正直 僕は 小心者なのだろう
根本的に 怖い話は 苦手だ
そんな怪談話を
満足気に話た友人を
顔色ひとつ 変えずに聞いていた〔相楽〕が
ボソッと呟いた
「誰から聞いたの?」
ア然とする友人が 誰から聞いたか 思い出していた
確かに 誰からか聞いた事は 間違いない
友人も聞いた時 インパクトがあったので 覚えていたのだから
「何で?」
当然 相楽の質問に疑問を抱いた友人は 素直に聞き返した
「この話 伝言だよ」
「……伝言?」
「そう 伝言」
なんか嫌な雰囲気になってきた
「この話 メッセージがついてる」
「…どんな?」
友人が 冗談半分で 苦笑いをした
相楽は 冷静な顔で友人の顔を眺め
「あなたの横に居る子供がずっと言ってる」
【忘れないで】
この怪談話は 霊からの伝言を 語り継ぐ話だったらしい
〓END〓
【第二章】血文字の壁
小説になります。
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