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田村屋本舗
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霊感少女  第一章

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鍵つきトイレ




僕の通った中学校は そこそこ歴史がある

何度も改築工事をしているので 決して木造建築の古い校舎ではなく ちゃんとした鉄筋コンクリートの校舎だ


僕の父親も その中学校の卒業生でもある


そんな学校も 昔は死刑場の跡地だったやら 首切り場だったやら 本当か嘘かわからない噂話は 沢山あった


宇都宮城の外壁が近所にあったり 生徒の名字が 武家っぽかったり 何かと怪しい中学校ではあったかもしれない


そんな学校も 立派な三階建の校舎には 洒落た防音設備を備えた視聴覚室なんて物まであった。

一般生徒は あまり使用しない視聴覚室は 中央校舎の階段を昇らない限り 視聴覚室へは行けず 簡単に説明すれば 屋上に視聴覚と図書館があった


視聴覚室と図書館だけが 四階にあったと言った方が 解りやすいかな


正直 三年になるまで 視聴覚室の存在を知らなかった。

屋上には よく行ったけど 図書館と違い 窓も黒いカーテンが閉められていて 中を覗けなかった

図書館から屋上は まる見えだったが


三年になり 視聴覚室で やれ なんだかんだと 高校受験の為の講義を開催するので やっと視聴覚室の中に入る事が出来たのだ

多分 機材とか高額な物が
ゴロゴロと置いてあるから 面白半分で 壊されない様に 管理していたのかも知れない

いつも視聴覚室は 鍵がしっかり掛けられていた

勿論 そんな恰好の遊び場を知ってしまえば 遊ばない訳は ない

授業中に 抜け出しては 視聴覚室の鍵を壊して 中で遊びまくる

床がワックスの効いた滑る床となれば 意味なくスライディングをしまくる


頻繁に使用しない視聴覚室も まさか 鍵を壊してまで遊んでいるとは思わなかったのか 教師に気付かれるまでに 随分 日にちがあった


教師に追い掛けられては 視聴覚室に 逃げ切っていたある日 とうとう 鈍足の仲間が 中央階段を昇る所を発見され 視聴覚室の隠れ場は 新たな鍵で封鎖されてしまった


残念な事に 視聴覚室を
封鎖された事を知らなかった僕らは 視聴覚室目掛け逃げ込んだ時 悠々と中央階段を昇ってくる教師に追い込まれ 中央階段の横の窓から屋上へ飛び移るはめになった

が…その窓の隣に 鍵の掛かったトイレの扉を発見してしまったのだ

視聴覚室の角に奥まった鍵付きのトイレの存在は
異様な雰囲気を漂わせている

小さな扉に頑丈な鍵がぶら下がっていた

「なんだこれ…」
「…トイレか?」
「気持ち悪ぃな」
「壊しちまうか?」
「………」


「…やめとこう」
「……そうだな」


そんな会話をした程
インパクトの強い
気味が悪い扉だった


勿論 戦闘力も萎え
とりあえず 窓から屋上へ脱出したものの
反対側の屋上の鍵が しっかり掛かっていて 呆気なく御用となった




それから 卒業するまで
視聴覚室にも
鍵付きトイレにも
寄り付かなかった


仲間と鍵付きトイレの話も
あえて 話題には しなかった


真っ白のトイレの扉
薄い擦り硝子があり
鍵が ぶら下がっていたが


今 思うと ドアノブが
あったかどうか 記憶にはない



そんな事を 思い出させられたのは やはり 〔相楽〕の怪談話だった



「開かずのトイレ」


ある中学校で イジメがあった

中学三年の男の子

イジメられていた男の子は 同級生に
「修学旅行は来るな」
と言われた

お前が来ると 修学旅行が楽しくなくなる

修学旅行の思い出を お前と一緒に送るのは嫌だ

そんな 意地悪を 言われ続けた男の子は 修学旅行の当日


屋上にある たった一つのトイレに 閉じ込められた


そして
男の子は トイレで首を吊って自殺をした


「僕も行きたい」


そう書き残したそうだ


それから 修学旅行が近付くと トイレから 啜り泣く声が聞こえ始め

そのトイレは 今では 鍵を付けられ
【開かずのトイレ】
に なったらしい



〔相楽〕は そう言って
僕らの顔を 見つめ

「開けなくて良かったね」
と 笑った。


作品名:霊感少女  第一章 作家名:田村屋本舗