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田村屋本舗
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霊感少女  第一章

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窓辺の少女




ある中学生が 父親からカメラを 譲りうけた。

その男の子は ずっと前から そのカメラが 欲しくて 父親に頼み込んでいたのだ。

父親が譲ったのは 成績の向上を見事に 息子が やり遂げたからだ


父親からの中古カメラ。

ズッシリと重く レンズの望遠を調節するたびに プロのカメラマンになった気分を味わえるカメラだ


そして男の子は 首からカメラを下げて 写真を撮りに出かける。


草や花。
公園の木々。
そして遊具。
ベンチや水道。

垣根に道路。

被写体は そんな物が多い。

野良猫も そうそう 簡単には撮らせては くれなかった。

インスタントカメラで簡単に狙う被写体とは違い
ピントを合わせる事すら難しい中古カメラだからなのだろう

慣れるまでが 一苦労ある


男の子は それでも良かった。

何枚も シャッターを切りながら 草花を撮影していた。


そして いつしか 学校に辿り着き 校舎の周りを囲むフェンス沿いを撮影していると 校舎の窓辺に 一人の少女が 窓枠に肘をついて頬に手を当てながら 男の子を見ていた。

男の子は 一瞬 少女を撮影しようと思ったが いくらなんでも 知らない人に いきなりカメラを向ける勇気はなく あきらめて帰る事にした。


家路に着いた男の子は お小遣を叩いてフィルムを現像したネガを 眺めながら 動かない草花の写真を並べ いつか 人物を撮りたいと思った


カメラを向けると
ピースをする人物ではなく
自然体な人物を撮りたいと思った


校舎の窓辺にたたずむ
自然体な少女が 脳裏から 離れず 男の子は 明日 また 学校に行ってみようと心に決めていた

しかし 学校は夏休み

明日は 居ないかもしれないと 半分 あきらめていた


翌日 男の子は カメラを首に下げて 真っ直ぐ学校へ向かう


校舎の横のフェンス越しに歩いて行くと 昨日と同じ窓辺に 同じ格好の少女が居た。


が…やはり 勇気が出ない

何度も フェンスの横を行ったり来たり カメラを持ったまま ウロウロと歩く男の子

窓辺の少女と 何度も目が会いながらも カメラを向ける勇気が出せず やはり その日も 撮影せずに あきらめて帰ってしまった


きっと 明日こそは
きっと 明日こそは

そんな事を 思いながら

そんな事を 数日 続けた男の子は 覚悟を決めた


きっと少女も カメラを持った男の子の姿を見て
〔撮影〕したいのだろうと 理解してくれているに違いないと思ったからだ


毎日 同じ窓辺で 同じ格好で外を眺めている少女も
〔撮影〕されるのが嫌なら きっと そこには 現れないと思ったからだ


男の子は 明日こそは 撮影しようと決めていた


そして 翌日
いつもの様に カメラを首から下げて 学校へ向かった


校舎の窓辺に居る少女が 一番よく見える場所で カメラを構えた


窓辺の少女は 窓枠に肘をつけ頬つえついたまま 男の子を見ている

男の子は カメラのレンズ越しに少女を覗き込み フレームの中に少女が収まる

望遠のピントを合わせ
シャッターを切る瞬間

窓辺に居た少女の上半身が肘をついた姿勢のまま 男の子に向かって 上半身だけの少女が飛びかかってきた


男の子は悲鳴をあげてシャッターを切った

そして…
レンズを覗き込む少女の瞳が 現像されたらしい



夏休みの学校



勿論 校舎の使用は
されていない




そこで 相楽の話は 終わった。
学校の怪談話だ。
何処にでもある 怪談話かもしれない

友人が 怖さまぎれに
「カメラ持ってねぇし」
と 冗談混じりに笑うと
冷静な相楽が
「この話を聞くと見るよ」
と ボソッと呟いた。


この話を聞くと
見るらしい


作品名:霊感少女  第一章 作家名:田村屋本舗