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赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 21話から25話

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 近年。商工会議所を中心に、芸者衆を残そうと『守る会』が組織された。
昼のお座敷や、女性だけの食事会などに、芸者さんが来て踊ってくれる
割烹のプランなどを編み出した。
あの手この手を尽くし、何とか存続を図っていこうと活動している。

 芸者の衰退には、いろいろな理由が絡み合っている。
時代が変り、芸者衆にお金を使うという気風が失われたことがそのひとつ。
景気が悪くなり、芸事に魅力を感じない人も増えてきた。
魅力的な芸者さん(スター)が出てこないことにも、原因がある。

 どうあれ衰退傾向に、歯止めはかからない。
「芸者」という文化を後世に残していくのは、簡単なことではないだろう。
正月や祝いの宴から、芸者衆の華やかな踊りが消えていくのは、やはり
どこかに寂しいものがある。

 生き残れるだろうかこの先を、会津の芸者衆は・・・
顔をあわせた途端。戦友の市さんと春奴お母さんのあいだで何故か
そんな暗い会話が始まってしまう。
『お母さん。せっかくのお座敷ですから・・・』豆奴が、あわてて
春奴の袖を引く。
春奴母さんがようやく、しんみりし過ぎている空気に気がつく。

 「そうや。春奴母さんと、くだらない愚痴話に興じている場合やおまへん。
 悲運の白虎隊と、会津磐梯山の東山温泉へ、ようこそ起こしやす。
 この子かいな。
 あんたが育てる、20年ぶりの新弟子っちうのは」

 いきなり市さんが、正面から清子を見据える。
年の頃なら50歳前後。衰えの様子が窺えるものの、外観といい物腰といい、
凛とした風情が、市奴から漂っている。

 (こちらはたしか、市左衛門さんと名乗るお母さんの戦友のはず・・・・
 でもこうしてまじかに拝見すると、どこからどう見ても
 年季の入ったお姐さんです。
 ということは、やはり、男性名を持った女性ということになるのかしら?)

 じっと市さんに見つめられている清子が、対応に戸惑っている。
頭の中が、猛烈な勢いで混乱しているからだ。