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われらの! ライダー!(第四部)

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 死神博士の号令に呼応するように、自分の顔を両手でぴしゃりと叩いて突進して来る怪人・モグラ男。
 仮面ライダーマッスルこと、剛はその癖と戦闘スタイルに見覚えがあった。
「お前! 中沢だな? そうなんだろうっ?」
 しかし、モグラ男はマッスルの声に反応せず、まっすぐ突っ込んで来た。
「中沢! 俺だ! 納谷だよ! わからないのか?」
 突進をかわしたマッスルが更に呼びかけたが、やはりモグラ男は反応しない。
 至近距離からでも瞬時にトップスピードに乗るその突進力は、マッスルをしても避けきれない。
「ぐあっ!」
「マッスル! 大丈夫か!」
「ああ、強化スーツのおかげでなんとかな……おい! 中沢、目を覚ましてくれ、中沢!」
 バシッ!
 しかい、モグラ男は、その大きな掌でマッスルを弾き飛ばした。
「マッスル! 知り合いのようだが、残念ながら既に脳改造されている! もうその怪人は君が知っている男ではないぞ!」
「くっ……中沢……もう、お前はお前ではなくなってしまったのか……」
 いつもの気迫が影を潜めてしまったマッスルに、モグラ男の大きな掌が振り下ろされる、そして、その先には鋭い爪が……。
「マッスル、しっかりしろ! とぉっ!」
 すんでの所でライダーのハイキックが決まり、モグラ男の大きな掌は弾き飛ばされ、マッスルも我に返る。
「すまん! ライダー! 俺としたことが」
「気の毒だが、脳改造を施されてしまった以上、彼はもう人間ではないんだ!」
「わかってる! 感傷に浸ってる場合ではないってこともな!」

 至近距離からでなければ、モグラ男の突進はそう有効な攻撃ではない、モグラ男を取り巻いていたスーパー戦闘員を全て倒してしまうと、モグラ男は洞窟へと逃げ込んだ。
「マッスル! 追うな! 暗い洞窟での戦闘はモグラ男の得意とする環境だぞ!」
「……わかってる、ライダー、しかし……やっぱり俺は奴を放って置けないんだ、平和を脅かす存在になってしまったのならせめて俺の手で……」
 ライダーの言葉を振り切るように、マッスルは洞窟の中へ消えて行った。
「マッスル!」
 ライダーとてマッスルの気持ちは良くわかる、見殺しには出来ない。
 ライダーもマッスルを追うように洞窟に走る。
「いかん! ライダー! マッスル! 罠だ!」
 仲間を案じるライダーマンの言葉を、死神博士の勝ち誇ったような高笑いがかき消した。
「わはははは……マッスルこと納谷が戦闘員たちのことを知っているように、われわれも納谷の性格を知っておるのだ! 見え透いた罠でも、情にほだされれば奴は飛び込んでくるとな!」

 ドガーン!

「しまった!」
 ライダーマンが歯噛みするよりも一瞬早く、洞窟入り口上部で爆発が起き、大きな岩が入り口を塞いでしまった。


「マッスル! どこだ?」
「ライダー! 君まで……」
「君を放っては置けないさ、それに怪人は怪人同士、俺にはショッカーの怪人を倒す使命があるからな……それにしても真っ暗だ」
「ああ、鼻をつままれてもわからない暗闇ってのはこのことだな」
「視覚は頼りにならん、聴覚に神経を集中しろ」
「ああ、わかってる」

 ライダーたちの会話に耳をそばだてながら、モグラ男は鼻をヒクヒクさせていた。
 モグラの中には目が退化してしまった種類もいるくらいだ、モグラ男の聴覚は、ライダーやマスクによって鋭敏になったマッスルのそれを遥かにしのぐ、ライダーたちの聴覚はせいぜい常人の二~三倍に過ぎないのだが、土中のミミズの動きさえ察知するモグラの聴覚はライダーたちの筋肉の動きですら手に取るようにわかるのだ。
 そして、モグラは匂いを立体的に把握できることもわかっている、その鋭い嗅覚は暗闇での戦闘に有効なセンサーとなる、いかに息を潜め、物音を発しない様に心を配っても、匂いを消し去ることは出来ない、暗闇の中でもライダーとマッスルの位置を正確に把握できるモグラ男にとって、洞窟での戦闘は大きなアドバンテージがある。

 バシッ!
「ぐあっ!」
「ライダー!」
 その声でライダーが攻撃されたことを知ったが、マッスルには全く予知できなかった。
「今そっちへ行く……わぁっ!」
 マッスルが声を上げたのはモグラ男の攻撃を受けたからではない、落とし穴にはまってしまったのだ。
 モグラは縦横無尽にトンネルを掘ることが出来る、耳に意識を集中していたにもかかわらず足音が聞こえなかったのも、トンネルを伝わって移動していたのだろう。
「大丈夫か? マッスル」
「ああ、ライダー、地面は穴だらけのようだ、これでは移動もままならないぞ」
「そうか……しかし、奴の攻撃を防ぐ手立てがないことには対処が出来ないな、一撃の威力はそれほどではないが、攻撃されっぱなしでは長くは持たないぞ」
「ああ……」
 ドカッ!
「うげっ」
「マッスル、どうしたっ?」
「体当たりを食った……今俺が這い出した穴から出てきたらしい、全く気付かなかったよ……こいつは消える魔球よりずっと厄介だな」
「ああ……うぐっ」
「ライダー! 大丈夫か? げっ!」
「マッスル、気をつけろ! がはっ!」

 相手の動きを掴めず、落とし穴だらけで身動きも取れないとあっては、ライダーたちになす術はない。

「せめて嗅覚だけでも封じられれば……」
「ライダー、俺にひとつ考えがあるんだ……」


 トンネルに潜み、攻撃を繰り返していたモグラ男だったが、明らかに混乱させられていた。
 匂いを立体的に嗅ぎ分けられるモグラ男は、二人の特徴的な匂いを嗅ぎ分けて、その位置を把握していた。
 しかし今は、ライダーの放つ草いきれの匂いはひとつなのだが、マッスルを特徴付けている匂いが二つに分かれて移動している……。
(両方の匂いがするほうがライダーだ、それに間違いはない)
 モグラ男はライダーめがけて飛び出し、体当たりを食らわせる。
「ぐえっ! 来たな! これでも食らえ!」
「ぐえぇぇぇぇぇ!」
 体当たりを食いながらもライダーがモグラ男の鼻先に突きつけた物、それは、マッスルが脱いだ靴下だった。
 テレパシーが通じるほどに愛し合っている志のぶですら、顔をしかめてしまうその匂い。
 鼻先に突きつけられたら、動物の中ではおそらくもっとも嗅覚が鈍い人間ですらクラクラしてしまう危険物、それを突きつけられればモグラ男は堪らない、鋭い嗅覚を逆手に利用する頭脳作戦だ。
「うげぇぇぇぇ」
「そこだ!」
 マッスル・パンチが顔面を捉える。
「ぎゃぁぁぁ!」
「見つけたぞ!」
「ぐはぁぁぁ!」
 ライダー・チョップが太い胴体にめり込む。
 モグラ男は堪らずトンネルに逃げ込んだ。


 ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!


 その頃、洞窟の外ではライダーマンとレディ9が残ったスーパー戦闘員達を次々と倒していた。
 ライダーマン、レディ9共にパワーではスーパー戦闘員に劣るが、頭脳と連係プレー、そしてアタッチメントと忍法と言うアドバンテージを生かした戦いだ。