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われらの! ライダー!(第四部)

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3.心を強く! ライダー!



(2017.1 お題 『癖』、『記憶』 ショッカーの怪人も元は人間だったわけで、脳改造を受けてすっかり悪の手先と化しているわけですが……人としての記憶は残らないものなのでしょうか……そして、アニメでも特撮でも描けない暗闇での戦闘シーンに挑戦してみました(^^))


『心を強く! ライダー!』


「とおっ!」
「イーッ!」
「食らえっ!」
「「イーッ!」」
「オラオラオラ、そんなもんかっ!」
「「「イーッ!」」」

 今日もショッカーのスーパー戦闘員を相手に、ライダー、ライダーマン、マッスルの三人は大暴れだ。
 そしていつものごとく、劣勢と見て取った死神博士は丘の上に逃げ、杖を振り上げて怪人を呼ぶ。

「出でよ! スポ根男!」

 死神博士の背後から姿を現したのは、胸にGのマークが入った野球のユニフォームを身にまとった男だ。

「わははははは! 貴様らにこのスポ根男の攻撃が避けられるかな?」
「まだ攻撃して来ていないじゃないか、それに野球選手にしか見えないが?」
「野球選手ではない! スポ根男だ! おい! 見せてやれ!」
 スポ根男がユニフォームをかなぐり捨てると、筋肉を逆に引っ張るバネが無数についたトレーニング器具が現れた。
「なんだ? それは!」
「大リ○グボール養成ギブスよ、日々これで鍛えた剛速球、受けてみるが良い!」
「伏字の意味があまりないようだが?」
「ふふふ、念のためよ」
「それに、野球のボールよりテニスのサーブの方が速いのではないか? 500kmサーブならシューゾーで経験済みだが?」
「ただの剛速球ではない、魔球よ! さあ、スポ根男、お前の実力を見せ付けてやるが良い!」
「はい! とうちゃん!」
「とうちゃんではない! 博士と呼べといつも言っておるだろうが!」
「はい! 博士」
 スポ根男はギブスをかなぐり捨てて、大きく振りかぶる、その瞳には燃え盛る炎が……。
「行くぞ!」
 スポ根男はサウスポー、右足を高々と振り上げ、真っ向から剛速球を投げ込んで来た。
「いくら速いと言っても……何っ? ぐわっ!」
 球筋を見切って軽く避けようとしたライダーだったが、何と、ボールが途中で消えたのだ!

「な、何だ? 今のは!」
「私は漫画で読んだことがあるぞ! あれは大リ○グボール二号だ!」
「何っ! 『消える魔球』が実在するとは!」
「こいつはちと厄介だな! ぐわっ!」
 マッスルもボールをヘルメットに受け、思わず倒れこんでしまう。
「くぅ……効くぜ、さすがに怪人が投げるボールだな、しかも見えないと来ては避けようがないぜ」
 少なからず動揺したライダーとマッスル、しかしライダーマンは冷静だ。
「マッスル、ライダー、私に任せてくれ!」
「何かわかったのか? ライダーマン」
「ああ、わかったと言うより、消える原理が原作の通りだとしたら対処はたやすい……これでどうだ? ウォーター・ガン!」
「う……」
「どうやら図星だったようだな」
「ライダーマン、どういう事か説明してくれないか?」
「消える魔球は水に弱い、と言うことさ、詳しくは(注1)を参照してくれ、アクションシーンの流れを止めてしまうからな」
「細かいことはいいや、要するにやつが投げる球はもう消えないってことだろう? ならば何も問題はないってことさ!」
 マッスルはスポ根男に向かって脱兎のごとく走り出した。
「あ、マッスル、逸るな! 巨○の星男ではなく、スポ根男と名乗るからにはまだ何かあるはずだ!」
「わかってるって、大体想像がつくぜ!」
 マッスルがスポ根男に向かって走る、迎え撃つスポ根男はグラブを投げ捨てて、ボクシングのファイティングポーズを取った。
「やっぱりそれか! 行くぜ! 右ストレート!」
「それを待ってたぜ! 食らえ! クロスカウンター!(注2)」
 両者の腕が交錯し、それぞれの顎にパンチがめり込む、傍目には相討ち……しかし、ガクッと膝をついたのはスポ根男だった。
「くっ……どうして……俺のクロスカウンターが敗れるとは……」
「ああ、見事なカウンターだったぜ、だが残念だったな、リーチは俺の方がかなり長いんだ、技に溺れたな」
「ち……ちくしょう……」
「ひとつ教えておいてやろう、その言葉は使わない方がいいぜ、七十年代ならともかく、今じゃヘイトスピーチと言われかねないからな」
「く……くそっ……」
「う~ん、それもギリギリアウトだ」
「燃え尽きたよ……真っ白な灰に……」
「そうだ、それでこそ名セリフだよ」
 シリアスなシーンに死神博士が水を差す。
「ええい! どうしたというのだ、スポ根男! いきなり真っ白になりおって! 立て! 立つんだ! スポ根男!」
「死神博士、今のセリフは時系列を間違えてるぜ、このシーンで言っても野暮なだけだ」
「うぬぅ……退け! 退くんだ!」
 死神博士はそう叫ぶだけ叫ぶと、戦闘員達を尻目にさっさと逃げ出した。


「なんだか自滅って感じだったな」
「ああ、しかし、スポ根男とは一体どういう改造なんだろう? 遺伝子工学でも外科手術でもないような……」
「しかし、見えないってのは厄介だったな……」
 見えない敵……後々それに悩まされることになるとは、その時三人ライダーは考えてもいなかった。


(注1) 消える魔球:高く上げた足で巻き上げた砂埃と、ホップする剛速球が巻き上げる砂埃の相乗効果で……消えマス(キッパリ) しかし、砂埃が上がらなければただの速球であると言う弱点がある。

(注2) クロスカウンター:向かって来る相手の勢いを利用し、タイミング良くパンチを当てることで威力を倍増させるのがカウンターパンチ、更に腕をクロスさせることで、テコの原理を応用して威力をアップさせるのがクロスカウンター、一体どこにテコの原理が働くのかは解明されていないが、とにかくスゲーパンチであることは間違いない(キッパリ)


ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!


「あなた、どうしたの? 浮かない顔をして……」
 その晩、志のぶが心配そうに剛の顔を覗き込んだ。
「もしかして、また戦闘員に知り合いが?」
「いや、その逆だよ、いなかったんだ」
「だったら、なぜ?」
「今の戦闘員チームからは俺が抜け、富樫も抜けたからな、あいつが外れる筈はないんだ」
「あいつって?」
「中沢と言う男さ、一回り年下でな、体も小さい方なんで入って来た時あまり強くはなかったんだが、とにかく退かない男でさ、体ごとぶちかまして来るんだ、不器用なんだが気風の良い戦いぶりが気に入ってね、俺も富樫も眼をかけていたんだよ……とにかく器用な戦い方が出来る男じゃないから、至近距離からの突進に磨きをかけるように指導してやって、今の戦闘員チームでならナンバー2か3には入る実力を身につけたんだ、ライダーとの戦闘で外されるとは思えないんだが……でも、今日は奴らしき戦闘員がいなかったんだ」
「風邪とかひいたのかも」
「だったらいいんだが……」

 剛の悪い予感は、残念ながら当たっていた。
 次の戦闘の時のことである。

「行け! モグラ男!」