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てっしゅう
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「歴女先生教えて~」 第三十七話

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「そうよ、自分の食い扶持は自分で稼ぐ。家族の生活は主人が守るという大原則ね。江戸時代でもそうした考え方を庶民たちはしてきた。武士だけが、それも旗本とか御家人とか言われる中央の役人だけが建前で生活をしていたから、武士は食わねど高楊枝となってしまったのね。しかし、コメの採れない貧しい地方の大名たちは工夫して産業を興し、ご禁制とはいえ食うために貿易をやっていたから財力をつけたの。その代表が薩摩藩であり長州藩だった」

「世の中の変化について行けなかった武士たちが最後の決戦で負けたということになるのですね」

「うん、明治維新は負けることが無いはずの徳川家が破れた。人数的に圧倒的に優位だった関が原で西軍が負けたことと同じよ。歴史は先人に学ばなければならないのに、役に立たない儒教の教えだけを信じて270年の平和は失われたのよね」

「徳川時代は封建制度という身分差別があってダメな時代だと考えていましたが、平和であったことは評価されるべきなのですね?」

「そうとも言えるわね。産業革命以前だからそうだったのでしょうけど、穏やかに西洋の文明を理解し受け入れてゆけば良かったのだとも言いたいわ。維新はクーデターだし、そのクーデターが正当化されることで次の戦争までも肯定される。儒教の教えにある王にふさわしい人物が徳川将軍ではなく天皇であるとの判断に時の十五代将軍だった徳川慶喜は従い大政奉還をした。公武合体という朝廷と徳川家が協力し合って日本を舵取りしてゆくという思いを薩長に邪魔されなければ、維新はクーデターではなくゆっくりと封建体制から立憲君主制に変わっていったと思うわ」

「何故薩長は勝つか負けるかわからない賭けをして、徳川政権を崩壊させようとしたのでしょう?」

「いい質問ね、渡辺くん。実質的に薩摩を動かしていたのは大久保利通と西郷隆盛、長州も後に長州ファイブと言われるメンバーの伊藤博文や井上馨そして木戸孝允や奇兵隊の高杉晋作ら身分の低い人たちだった。自分たちが実権を握るためには藩主と組んで徳川幕府の公武合体に協力してはダメだと言う事だったの。同時に宮中でも位の低い公家の岩倉具視や三条実美(さねとみ)、姉小路公知(あねこうじきんとも)らが担ぎ出され、偽の孝明天皇の宣旨を振りかざしてクーデターに参加した。錦の御旗と呼ばれる菊のご紋が入った旗で自分たちは皇軍であるとしたのね」

「徳川家に仕えていた幕臣たちもこの御旗に刃向うことは出来なかったということですね」

美穂はこの時代の日本の政変があの太平洋戦争へと進む軍事大国化への始まりだと考えていた。