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貴方に逢えて

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4





”彼女がいる男になど
 興味がない”


何度 顔を洗って
洗面台の鏡を
覗きこんでも


胸まで伸びた髪は
御洒落なシャギーを入れ
軽いパーマが掛かっている


女性として見られたい意識が
見え隠れする姿に
溜息が漏れる


”複雑な心境”




恋愛不器用な麻衣


薄っすら覚えた
男女の恋愛観は
悪魔と天使が
格闘する


”別に結婚してる訳でもないし
 浮気でも何でもない”


強気な女性本能


”何年も連れ添った彼女を
 裏切らせてしまう”


弱気な女性本能


恭一が欲しい訳ではなく
それでも恭一が欲しい


愚かな感情に
振り回される自分自身が
酷く醜く思え


嫌気が刺してくる



麻衣の気持ちを
何も知らない恭一


恭一が 鈍感なのではなく
麻衣が 悟られないよう
繕っているから


仲の良い 先輩後輩として
永遠に続く関係


何年も掛けて
築き上げた絆


麻衣の気持ちを
隠し続ける事で


保たれた絆である事は
麻衣が一番
解っていた



職場であれば
偽った感情のまま
気付かれる事もなく
素直に笑え合える


一分一秒でも長く
恭一と話していたいと
独占欲など抱かなくても
先輩後輩でいられるのに


何故 離れてしまうと
こんなにも寂しくなるのだろう


偽っている自分が
惨めに感じるのだろう


壊したくない絆さえ
壊してしまいたくなるのは
何故なのだろう



悶々と出口のない迷路を
彷徨っているようで
何もかもを捨ててしまいたくなる


恭一に出逢わなかった頃のような
生真面目だけの麻衣に
戻りたいとさえ思う


冷めた感情で
冷静に状況を判断し
責任感強く


そして 恋心などに
振り回されない
気丈な麻衣に戻りたいと願い


それでも 麻衣の胸に
突き刺さるのは


「男前やな」と言われた
恭一の言葉だった




望んでも
手に入らない恋


”横恋慕”


それでも望む人達が
哀しい恋に堕ちる


愛する人を待ち侘びて
恋焦がれるドラマのような
不倫関係


何故 愛人と理解しながら
人を愛せるのだろうと
貪欲な世界に
好感は持てなかったが


今になれば
麻衣にも 解る気がする


たまたま好きになった人に
彼女がいただけの事


たまたま貴方に
出逢ってしまっただけの事


僅かばかり
遅すぎた出逢いだった


それだけの事なのだろう



悟られてはいけない
恋心


何もかもを
失ってしまう
危うい恋心


それでも
恭一の笑顔を見るたび
胸が踊る


恭一の声を聞くたび
胸が締め付けられる


手を伸ばせば
届く距離が
果てしなく遠い


もし この恋心を
曝け出したら
恭一は どう想うのだろう


先輩後輩の絆は
毒々しい蔓に変わり
息苦しく絡みつくのだろうか



恭一の無邪気な笑顔が
あまりにも自然で


男らしく振舞う
麻衣の笑顔が



とてつもなく
不自然


だけど
恭一と居る時は


”男前”でいたい


悟られてはいけない
苦しい片想い



作品名:貴方に逢えて 作家名:田村屋本舗