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われらの! ライダー!(第二部)

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「あ、ロープ……ああ、ダメ、鎌で切れちゃう、掴まれないわ! ああ、うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ……」

「あんただって同じようなもの……か……その台詞は堪えるね……」
 がけ下へと落ちて行くかまきり夫人の悲鳴を聞きながら、ライダーはひとりごちた……。


O(・_・)○☆   o(・_・)○☆   o(・_・)○☆   o(・_・)○☆


「富樫、これを返すぜ」
「これは……」
 マッスルが軽く放ったのはあのロケットペンダント。
「大事なものなんだろう? もう落とすんじゃないぜ」
「ああ……礼を言うよ」
「訊いたことがあったよな、何でそれをいつも身につけてるのかって」
「ああ……あったな」
「あの時、お前はこう答えたんだ……『俺たち戦闘員はいつ死んでもおかしくない、死ぬ時は家族に見守られて死にたいものだが、そう上手くも行かないだろう、だからせめて家族の写真を肌身離さず持ち歩いているんだよ』ってな……一字一句間違いなく憶えているぜ」
「確かにそう答えたかも知れないな……」
「高熱の話は本当だ、四十度の熱が何日も続いてみろ、確実に死ぬぜ、お前は家族を残して死にたいのか?」
「……だが、だが、他にどうしろと言うんだ? 俺には家族を養う義務があるんだ、確かにプチ改造は安全だろうと考えたのは甘かったようだ、だが、次々と志願していく中で、中年に差し掛かった俺がショッカーで生きていくためにはそうするしかないじゃないか!」
「ショッカーと言う組織の中ではな、だが、俺を見ろよ、ショッカーから足を洗ってもちゃんと生きてるぜ」
「俺だってそうしたいさ、だが、家族はどうなる? お前と違って小さな子供もいるんだ、俺が逃げ出したら、妻は? 子供は? 無事でいられると思うのか? 俺はショッカーを裏切るわけには行かないんだよ!」
 そう叫ぶと富樫はストレートパンチを繰り出して来た、マッスルがそれを難なくかわすと、白いロープが飛んで来て富樫を絡め取り、白い忍者装束が閃光のように走ると、富樫に馬乗りとなって、ヘルメットを脱がせた。
「富樫さん、じっとしてて」
「その声は……志のぶさんか?」
「そうよ、捕まって動けないフリをしてて」
「それは……」
「今、ここであなたは死んだことにするの、そうすればショッカーもあなたを探したりしない、家族にも手は出さないわ」
「そ……そうか……」
「このクナイであなたを刺すフリをするわ、出来るだけハデに死ぬ演技を……」
「わかった……」
「行くわよ……エエイッ!!」
「ぎゃああああああああああ」
 志のぶがゴム製のクナイを富樫に突き立てると、空洞になったクナイの中から真っ赤な血のりがハデに飛び散った。
「い、いかん……退却、退却だ! 貴様ら、ワシを守って走れ!」
 死神博士は、あくまでも自己中に、僅かなノーマル戦闘員だけを引き連れて逃げて行った。


「富樫さん、もう大丈夫よ」
「ああ……ありがとう……」
「縛ったりしてごめんなさい」
「とんでもない……俺は危うく家族を泣かすところだった……恩に着るよ……ありがとう、納谷、ありがとう、志のぶさん……」
「良いんだ、礼なんか、親友じゃないか、当たり前のことをしただけさ……それより、まずは奥さんに電話だ、ショッカーから死亡通知なんか届いてみろ、奥さんの寿命が縮まっちまうぜ」
「ああ、そうだな……あ、でも、スマホが……」
 すると、ライダーマンがスマホを差し出す。
「これを使ってくれ……おっと、その前に注射だ」
「それは……」
「副作用を抑える薬だよ」
「何から何まですまない……ああ、俺だ……無事だよ、納谷に救われたんだ、ショッカーから通知が行くと思うが、俺はピンピンしてるから心配するな、ショッカーからも足を洗えるんだ……ああ、本当だとも、新しい仕事を見つけるまで苦労をかけると思うが……そうか、ありがとう……しばらく子供たちと待っていてくれ、ほとぼりが冷めたころ必ず迎えに行くから……ああ、そうだ……うん、新しい人生の始まりだよ……ああ……ああ……必ず……わかってるよ……じゃあな………………ありがとう、ライダーマン……それと、こんなことを頼めた義理じゃないんだが……もし良かったらプチ改造を受けたあいつらにもさっきの薬を……」
「いいとも、ただし、もうショッカーに戻らないと約束してくれたらだがね」
 ライダーマンはいたずらっぽくウインクを……多分、した……。


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(テーマソング https://www.youtube.com/watch?v=D6wNzIrdSUk を右クリック、一旦YouTubeに飛んでからお戻り下さい)


「あなた、富樫さんから手紙よ」
「そうか! 早く見せてくれ!」
「もちろんよ、ねぇ、どうしてるの?」
「ちょっと待ってくれよ、これから読むんだからさ……岩手の田舎に戻って畑を耕しているそうだ」
「へぇ、富樫さんなら人の二倍耕せるわね」
「ははは、違いない……お、写真も入っているぞ」
「どれ?……わぁ、幸せそうね……」

 それは、太い腕に二人の息子をぶら下げてにっこりと笑う富樫と、微笑みながらそっと寄り添う奥さんが写った家族写真だった。

 剛が窓の外の夕焼けに目をやると、志のぶもまた窓の外に目をやった……。
 かつて苦楽を共にした親友もまた、故郷の畑でこの夕焼けを眺めていることだろう……。
 
 親友とその家族は平穏な暮らしを手に入れた。
 自分は、志のぶは、まだまだ戦いの日が続くだろう……。
 だが、そんなささやかな幸せを、この美しい日本を蹂躙しようとするショッカーを野放しにするわけにはいかないのだ……。

 志のぶの手を握ると、志のぶもまた、その手を力強く握り返して来た……。


          (友よ! ライダー! 終)