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われらの! ライダー!(第二部)

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「ええい! 動揺するな、口からでまかせだ! マッスルよ、貴様、裏切るだけで飽き足らずにワシの返り咲きを妨害しようというのか!?」
「本当なんだ、お前ら、ひと月ごとに高熱に悩まされるぞ、そしてその間隔はだんだん短くなる、そのままだと二~三年で死ぬぞ!」
 あまりに具体的な説明……動揺は更に広がったが、しかし、その中の一人が一歩前に出た。

「俺はこれに賭けたんだ! 先が短いなら、余計にここで手柄を挙げないとな!」

 富樫の声だ……。
「富樫か、俺はお前と戦いたくない、お前を殴りたくないんだ! 頼む! 投降してここにいるライダーマンの治療を受けてくれ!」
「おいおい、空気を読めよ、この場、この状況でそんなことが出来るはずはないだろう?」
「富樫……」

 マッスルは唇を噛み締め、死神博士は満足げに頷く。
「そうだ、その通りだ、しかも、ライダー、お前を倒すためだけに改造した怪人を連れて来ているのだ、先が短いのは貴様らの方だ、しかもそれは二年、三年先じゃない、たった今、ここで死ぬのだ!」
「俺専用の怪人? 続・かっぱ男じゃあるまいな?」
「わはは! かっぱ男は貴様に食われたが、今度は貴様を食らう怪人を造り出したのだ……これを見ろ!」
 歩み出てきたのは赤い長襦袢をゆる~く纏った熟女、胸元からは豊かな胸がこぼれそう、右脚をぐっと前に突き出して太ももも露わにし、口元には真っ赤な口紅。
「女?……やけに色っぽい怪人だな、だが、強そうには見えないぞ」
「わはは! 正体を現せ! かまきり夫人!(*注)」
 さっと腰紐を解いた女は、見る見るうちにカマキリに変身して行く。
 赤い長襦袢を纏ったカマキリ……胸部は緑色に変わっているものの、巨乳はそのままの形で残り、大きな鎌は鈍く銀色に光っているが、中肢、後肢は肌色のままで、形状にも妙に人間っぽさが残っている、頭部は完全にカマキリと化しているが、口元には真っ赤な口紅が……。
「バッタはあたしの大好物よ!」
「うっ……なんだか艶めかしいような、気持ち悪いような……しかし、死神博士、どうしてカマキリ女でなくてかまきり夫人なんだ?」
「そのほうがエロティックだろうが」
「大人向けの番組ではないのだが……」
「最近は母親の人気を得ようとイケメン俳優を使うではないか、お父さんにもサービスがあってしかるべきではないのかな?」
「わかったような、わからないような……いや、そんなことはどうでも良い、受けて立つぞ、かまきり夫人!」

(*注:かまきり夫人:当時35歳の五月みどり主演、熟女ブームを巻き起こした1975年公開のポルノ映画)

 かまきり夫人が翅を広げて飛び立つと、五人のスーパー戦闘員も丘を駆け下りる。

「ライダー! 戦闘員は私とマッスルが引き受ける!」
「わかった、怪人は任せろ!」
 激しい戦闘が二極に分かれて繰り広げられる。

「きぃっ! きぃっ!」
 かまきり夫人はその大鎌を振り回してライダーを襲う。
「女みたいな掛け声だな、あ、女か……しかし、この鎌は厄介だな……うっ、しまった!」
 硬派のライダーはなかなか女性に手を上げることが出来ず、鎌をかわしながら下がるうちに崖を背負ってしまったのだ。
「くっ……パワーもあるな……」
 ライダーは鎌の根元を掴んで止め、足払いをかけるが、なまめかしい四本足のかまきり夫人には通じない。
「ならば……これでどうだ!」
「ぎゃっ」
 ライダーが頭突きを食らわすとかまきり夫人がひるみ、その隙にライダーは高くジャンプして窮地を脱した。
「もうっ! 鼻がつぶれるじゃない!」
「鼻? どこが鼻だか良くわからないが……」
「あんただって鼻はないじゃない!」
「確かにそれには反論できないな、しかし、戦闘は別だ、これで鎌は封じたぞ」
 ライダーはかまきり夫人の背に跨り、鎌を備えた腕を羽交い絞めにして封じた。
「きぃっ! だけどそれじゃあんただって攻撃できないじゃない!」
「そうでもないさ」
 ライダーは上半身を横に回転させてかまきり夫人を投げ飛ばした。
「きぃっ! なかなかやるわね、ここからが勝負よ」
「望むところだ、女だからと言ってもう容赦はしないぞ」
 ライダーとかまきり夫人は再びにらみ合った。


 その頃、ライダーマンは二人のスーパー戦闘員相手に苦戦を強いられていた。
 強化スーツの性能はライダーマンに分があるものの、プチ改造が加わったスーパー戦闘員にパワーでは及ばないのだ、加えて、弱点だったアメフト用ヘルメットも透明シールドを備えた専用の物に変わっている。
(くそう、分が悪いな……そうだ! 逆にシールドが弱点になるぞ!)
 ライダーマンは背を向けて走り出す。
「逃げても無駄だ、見苦しいぞ、ライダーマン!」
「逃げてなどいないさ、間を取っただけだ、これを食らえ!」
「うわっ! 何も見えない!」
 ライダーマンの右腕にはスプレーペイントアーム、ライダーをツタン仮面から救った時にはクリアブラック塗料を仕込んでいたが、今回はマットブラック、それをシールドに浴びたスーパー戦闘員は前が見えずに鉢合わせ、その隙を狙って、ライダーマンはロープアームを発射し、二人をぐるぐる巻きにしてしまった。


 マッスルもまた苦戦していた。
 一対三でもマッスルの格闘センスを持ってすればそうそう苦戦はしない、しかし、そのうちの一人は親友の富樫、彼もマッスルに準じる格闘センスを持っている上に、マッスルには富樫を傷つけたくないと言う思いもあるのだ。
 その時……。
「うわっ!」
「何だ! これは!」
 ライダーマンのスプレーペイントが炸裂し、二人のスーパー戦闘員の視界を奪う。
「ライダーマンキック!」
 ライダーマンは右往左往するスーパー戦闘員を易々と倒し、マッスルに向かって叫ぶ。
「マッスル! そいつは任せるぞ、私はライダーの加勢に廻る!」
「ああ! ぜひそうさせてくれ」


O(・_・)○☆   o(・_・)○☆   o(・_・)○☆   o(・_・)○☆


「ライダー! 大丈夫か?」
「ライダーマン! 相手が女だと思うとどうも勝手が違うんだ」
「う~ん……ライダー、これを女と認める君を尊敬するよ」
「な、何ですってぇ! きぃぃぃっ!」
 かまきり夫人はめちゃくちゃに鎌を振り回しながらライダーとライダーマンの間を右往左往するばかり、しかし、迂闊には近づくことが出来ない。
「ライダー! あの崖を使おう」
「ん? そうか! 俺が囮になる」
「頼んだぞ! ライダー!」

「こっちだ、こっちだ、ヒステリーオバサン」
「オバサンですって? きぃっ!」
「どこを狙ってるんだ、そんなに無闇に鎌を振っても当たらないぞ……」
 ライダーは一つ大きく息を吸って、決定的な台詞を吐いた。
「このバケモノ!!!!」
「なによっ! あんただって同じようなものじゃない!!! ああっ! いけない!!!」
 ライダーが大きくジャンプしてかまきり夫人の攻撃をかわすと、そこは崖っぷち。
「あわわわわ……」
 たたらを踏むかまきり夫人の背中にライダーマンのロープアームが飛んで翅を封じると、ぎりぎりのところで踏みとどまっていたかまきり夫人は崖を踏み外す。