小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

われらの! ライダー!(第二部)

INDEX|3ページ/10ページ|

次のページ前のページ
 

 ライダーマンはロープアームからフックを発射し、天井から下がった日の丸のポールに引っ掛けると、ターザンのように飛んで行った。

「ぐふふ、ライダー、バッタは俺様の大好物よ」
「小癪な! これでも食らえ! とぉっ!」
 ライダーが空中高く飛び上がる。
「ふん! 飛んでいる昆虫を捕らえるのは俺様の得意中の得意よ」
 ガマ男の長い舌がライダーに向かって飛ぶ、しかしそれは予想していた攻撃、ライダーは体をひねってそれを避けたのだが……。
「何っ!?」
「ぐふふ、ライダー、俺様の舌は伸縮自在よ」
 飛んで来る舌は避けたものの、戻る舌に首筋を絡めとられてしまったのだ。
「しまった!」
「ぐふふ、ぐふふ」
 何度もライダーを床に叩きつけるガマ男、ライダー危うし!
 その時、大きな声が響く。
「俺が居るのを忘れちゃいませんかってんだ!」
 戦闘員を全て倒したマッスルが、タイツの中からなにやら光る物を取り出してガマ男の長く伸びた舌を小脇に抱え込む。
「ギャッ!」
「ヒャッハー! プロレス名物、フォーク攻撃だぜ! お味はどうだい?」
「ギャーッ!」
 マッスルに何度も舌をフォークで突き刺されたガマ男はたまらずにライダーを離し、うずくまる。
「助かった! ありがとう、マッスル」
「いいってことよ、だが、ライダー、どうやらSOSのようだ」
「愛のテレパシーか?」
「『愛の』は余計だよ、テレるじゃないか」
「行ってくれ、マッスル、もうさっきのような油断はしないさ」
「ああ、ここは任せたぜ、ライダー」
 ようやく立ち上がったガマ男とライダーは一対一で対峙する。


o(・_・)○☆   o(・_・)○☆   o(・_・)○☆   o(・_・)○☆


 その頃、南西の二階スタンドには地獄大使が引き連れてきたスーツド戦闘員達が暴れていた。
「しまった! 鞭か!」
 ライダーマンは元々科学者、特別な身体能力には恵まれていない、スーツによる身体強化も地獄大使のスーツド戦闘員と同程度、ライダーマンのアドバンテージは明晰な頭脳を別にすれば、右手に装着するアタッチメントのみだ。
 電撃アタッチメントを装着して奮闘していたが、一人で大人数を相手にするのは無理がある、右腕を鞭で絡めとられてしまうと身動きが取れなくなってしまったのだ。

 そして、志のぶもまた戦っていた。
 スーツド戦闘員達がライダーマンと戦っている隙を突いてノーマル戦闘員達が二階スタンドにいたエミを攫いに来たのだ。
 志のぶの戦闘力では応戦するのが精一杯、ノーマル戦闘員と言えども相手は訓練された男達、エミを背後にかばいながら、志のぶは追い詰められて行く。
(あなた! 助けて!)
 志のぶは心の中で叫ぶ。
 ……そして、その思いは通じた。
 飛び掛って来たはずの戦闘員が不意に仰向けになったかと思うと、アリーナへふっ飛んで行く、駆けつけたマッスルが首根っこを掴んで放り投げたのだ。
「おいおい、人の恋女房に手を上げてるんじゃねぇよ」
「あなた!」
「待たせたな、だが俺が来たからには指一本触れさせねぇぜ」
 ノーマル戦闘員はマッスルの相手ではない、瞬く間に全員を倒し、あたりを見回すと、ライダーマンはアリーナに戦場を移して奮闘中だ。
「エミさんは任せたぜ!」
 マッスルはアリーナに飛び降りると、三連のパイプ椅子を引っつかむ。
「おりゃぁぁぁぁ!」
 パイプ椅子を持てばマッスルは百人力、ライダーマンの右腕を鞭で捕らえていたスーツド戦闘員は一撃で吹っ飛ばされた。
「助かった! さすがだな! マッスル!」
「軽い軽い、さっさと片付けちまおう」
「おう!」
 鞭から解放されたライダーマンも鬱憤を晴らすかのような大暴れだ。


o(・_・)○☆   o(・_・)○☆   o(・_・)○☆   o(・_・)○☆


「とおっ!……クソっ!」
 時を同じくして、ライダーはガマ男相手に苦戦を強いられていた。
「ぐふふ、この肌のぬめりが気に入らないようだな、ライダー」
 ガマ男の皮膚は粘液で覆われている、パンチやキックを繰り出すものの、スリップしてしまい、威力を発揮できないのだ。
「ぐふふ、死ね! ライダー!」
 ガマ男は矢継ぎ早に毒液を発射してくる。
 毒液は強力で直撃したコンクリートの壁や床には硝煙とともに大きな穴が開く、直撃を食らえばライダーとて無事ではすまない。
(どうやってこいつを倒せば……そうだ!)
 ライダーは毒液攻撃をかわしながらもトイレに駆け込む。
「ぐふふ、そんな狭い空間へ逃げ込んでどうしようというのだ、墓穴を掘ったな、ライダー、それとも恐ろしくてチビりそうなのか? ぐふふ、ぐふふ」
 既に勝ち誇った様子のガマ男が悠然とトイレへ入って行くと、ライダーは手洗い器の列を背にして立っている。
「とうとう観念したか、ライダー、ここが貴様の墓場となるのだ、憧れのヒーローがトイレで死ぬことになるとは、子供達もガッカリだろうな」
「墓場? それはどちらの墓場かな?」
 ライダーがさっと身をかがめると、そこには大きな鏡が。
「ぐっ……まさか……」
「気がついたようだな」
 ガマ男が振り向くと、清掃員のおじさんが壁から外した別の鏡を抱えている。
「クソッ!」
 横を見れば別の清掃員も鏡、振り向くとさらにもう一人……。
「四方を鏡に囲まれるとは……不覚……」
「さあ、皆さん、距離をつめて下さい、ガマ男を追い込みましょう!」
 最初の鏡を外して手にしたライダーと、三人の勇敢なる清掃員はじわじわとガマ男との距離をつめて行く。
「ぐあぁぁぁぁぁ……」
 ガマ男の全身からは滝のような脂汗、俗に言う『ガマの油』がターラリ、ターラリと流れ落ちる。
「おのれ、ライダー……まさかこの俺様が清掃員にやられるとは……」
 膝をついたガマ男は見る見るうちに干乾びて行った。


 o(・_・)○☆   o(・_・)○☆   o(・_・)○☆   o(・_・)○☆


「地獄大使は? 地獄大使はどこへ行った?」
「あっ、あそこだ!」
 ライダーマンとマッスルが奮闘している隙を突いて、地獄大使はステージへ向かって走っていた。
 要人達は警官に守られては居るものの、地獄大使は拳銃の弾を受けても全くひるむことなく、今まさにステージに跳び乗ろうとしている。
 マッスルたちが今居る場所は南西、ステージは北、ほぼアリーナを横切らなくてはならない、走っていてはとても間に合わない!

「マッスル! 君はローラーゲームを知っているか?」
「ああ、知っているとも、ライダーの放送が始まった頃大人気だったそうだな」
「ならば話は早い、君の脚力を貸してくれ」
「脚力? そうか! 判ったぞ! 掴まれ、ライダーマン」
「頼んだぞ!」
「よし! レッグホイップだ!」

 ローラーゲームとは、楕円形のコースに五人づつの二チームが入り、ジャマーと呼ばれる一人の選手が相手チームの選手を何人追い抜けるかを競うスポーツ、七十年代初頭、東京ボンバーズは長身のミッキーの脚にエースのヨーコが掴まり、ミッキーが回し蹴りの要領でヨーコを加速させる、そのレッグホイップでしばしば大逆転勝ちを収めた。
 ライダーマンとマッスルは幸いにしてその記憶を共有していたのだ。