われらの! ライダー!(第二部)
白いボディスーツ、忍者服のデザインを踏襲しながらも、素材は現代の素材、体にフィットしていかにも動きやすそうだ……もっともそのことが志のぶのスタイルの良さを強調しているのだが……。
「しかし、白は目立たないのかな?」
おやっさんは心配するが、志のぶはさっとドアの前へ……すると木目調のドアと同じ色合いに……。
たしかに瞬時に変わるわけではないし、溶け込んで消えてしまうわけではないが、保護色にはなる。
「素晴らしいです、結城さん、ありがとうございます」
「それが精一杯なんだ、でも助けぐらいにはなるだろう?」
「ええ、後は私の術のみせどころですね、気配を消す術は習得していますから」
ライダーのスタイルとは違うものの、志のぶにもチームの一員としての体裁は整った。
「南と南西は一番目につき易いな」
ライダーチームの作戦会議、武道館の地図と図面をテーブルに広げ、みなでそれを囲んでいる。
「確かに……ショッカーが潜むとすればどこだ?」
「北西から北は駐車場だ、隠れるところはないな」
「だとすると、どこだろう?」
「ここはどうですか?」
志のぶが指し示したのは千鳥が淵、それを聴いて一同は顔を見合わせた。
「そこだ……」
千鳥が淵ならば、酸素ボンベを使えば警備されていない箇所から入り、見つからずに武道館周辺に集結する事は可能だ……。
ライダ~ \(\o-) →(-o/) / ヘンシ~ン!→\(〇¥〇)/ トォッ!
志のぶの泳ぎは体全体を波打つように使うドルフィンキック。
背泳ぎのバサロ・スタートでおなじみであり、深さを競うフリーダイバーもこの泳ぎ方、人間が水中を移動するためには最も理にかなった泳法であり、それを戦国時代に確立していたというのは驚きだ。
お世辞にも透明度が高いとは言えない千鳥が淵、保護色スーツに身を包んでいれば発見される恐れは小さいが、相手はショッカーである、どんな能力を秘めた怪人を用意しているかはわからない、志のぶは慎重に水中を探索し、鍛え上げた視力、聴力をフルに働かせる。
「居る……」
志のぶの耳にアクアラングから発生する泡の音が届いた。
その方向に目を凝らせば、おぼろげながら敵の姿を捉えることも出来る。
戦闘員はざっと二十人ほど……そして中央には特徴的なシルエットの怪人の姿も……。
発見されては何もならない、ここまでの情報が入手できれば当面の目的は果たせる。
志のぶは北西まで移動して岸に上がった。
「どうだった?」
そこで待ち受けてくれていたのはおやっさんだ。
「北東入り口付近に二十名ほど、怪人もいます」
「どんな怪人かわかるか?」
「はっきりとは……でも、シルエットから想像すると……」
「想像すると?」
「おそらくはガマガエルの怪人ではないかと」
「わかった、ご苦労さん、そこまで判れば充分だ」
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おやっさんからの通信を受けて、ライダー、ライダーマン、マッスルは北東入り口付近に集結した。
「ガマ男だと?」
「最近のショッカーはヌメヌメ、ヌルヌルした怪人が多いな」
「ガマガエルの能力を持っているとすると、毒液を出すかもしれないぞ、気をつけろよ」
ライダーマン・結城丈二は博識である。
「カエルの力となると、ジャンプ力もあるだろうな」
「ガマガエル自体はのそのそ這うだけだが、人間に置き換えれば確かに脚力はあるだろうな、それよりも……」
「それよりも?」
「素早く動けない分、長い舌を飛ばして捕食する能力に長けている、舌に気をつけろよ」
「ガマガエルは何を食うんだ?」
「昆虫が主食だな」
それを聴くと、ライダーはちょっと嫌そうに首を振ったが、襲撃地点の特定、戦闘員の数も含めて、そこまでの情報を得られているのと居ないのとでは大違い、志のぶは充分な戦力となっている。
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党大会も佳境、首相が演説を始めようとした時だった。
「「「「「「「「「「イーッ!!!!」」」」」」」」」」
スーツド戦闘員たちが武道館に乱入しようとする。
そこには三人のライダーが待ち受けているとも知らずに。
「くらえ! ウェスタンラリアット!」
「ぐあっ!」
先頭を走っていたスーツド戦闘員が吹っ飛び、すぐ後ろを走ってきた者を巻き添えにして床に転がった。
「招待状は持っているのかい? 持っていなければここを通すわけには行かないんだよ」
立ちふさがったのは仮面ライダー・マッスル! 新ライダーとして、堂々のデビューだ!
「誰だ? 貴様は! 見たことがないヤツだな!」
「いや待て、この声には聴き覚えがあるぞ……」
「ほう、覚えていてくれたのかい? 多分ご想像の通りだよ」
「この裏切り者が!」
「悪の秘密結社に裏切り者呼ばわりはされたくないね、俺は仮面ライダー・マッスルとして生まれ変わったのさ」
「何を小癪な! 俺たちをただの戦闘員と思うなよ!」
「ああ、知ってるさ、だが、地獄大使の強化スーツを着ただけだろう? ヘルメットもアメフト用から変わっていないところを見ると中国企業とはうまく行っていないようだな」
「うるせぇ! 見ろ、フェイスガードは改良済みだ」
「ただラインメン用に換えただけじゃねぇか、それくらいで防御できるとでも思うのか?」
ラインメン用のフェイスガード、顔全体を覆うように作られてはいるが、視界を保つためにやはり目の部分はバーもまばらだ。
マッスルはタイツの中に潜ませたメリケンサックを取り出す、プロレスでは定番の凶器だ。
「ぐへっ!」
「ぎゃぁ!」
マッスルの怪力はフェイスガードを楽々と粉砕して眉間にメリケンサックをめり込ませ、衝撃吸収力を備えたスーツの上からのパンチでも充分なダメージを与える。
瞬く間に倒されたスーツド戦闘員の山が築かれた。
「今の俺には到底敵わないぞ、さっさと尻尾を巻いたほうが身のためだぜ、そもそもハワイ旅行をゲットした奴なんか一人もいねぇんだ、あんなのはただの餌さ、いいかげんに目を覚ましやがれ!」
マッスルが倒したスーツド戦闘員に足をかけて大見得を切ると、腰の引けた戦闘員を掻き分けて怪人が進み出てくる。
「ナルホド、こいつはガマ男に違ぇねぇや、だが、そのぶよぶよの腹は鍛えられていねぇようだな!」
マッスルは全体重を乗せた渾身のパンチをガマ男の腹に叩き込む、しかし、弾き飛ばされたのはマッスルの方だった。
「なんて腹だ、ゴム風船みてぇでパンチが効かねぇ」
「マッスル、ライダーマン、ここは改造人間同士、俺に任せて、君達は残りの戦闘員を」
「「おう!」」
しかし、その時、ちょうど対面に当たる南西入り口付近から立て看板を踏み倒して戦闘員達がなだれ込んで来る。
「しまった! 陽動作戦か! 道理で地獄大使が姿を見せなかったわけだ、ライダー、マッスル、私はあちらに当たるぞ」
「おう! ガマ男は任せろ!」
「戦闘員は引き受けた!」
「頼んだぞ!」
作品名:われらの! ライダー!(第二部) 作家名:ST