小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

われらの! ライダー!(第二部)

INDEX|1ページ/10ページ|

次のページ
 

1.踊れ! ライダー!



(2016.07 お題:『体裁』、『向かい合う』、『立て看板』 向かい合うを見詰め合うという感じで……立て看板はチラッと、体裁は不使用です)


『踊れ! ライダー!』


「自○民○党大会?」
「ああ、衆参同時選挙、その後すぐに都知事選もあるからな、武道館を借り切って盛大にやるらしい」
 立花レーシングの事務室、新聞をはさんで一文字隼人と結城丈二(ライダーマン)が向かい合っている。
「大物議員も大勢集まるんだろうな」
「当然そうだろうな、警察でも大規模な警戒体制を敷くらしいが」
「しかし、もしショッカーが狙うとすれば、警察だけでは心許ないな」
「ああ、確たる情報はないが、ショッカーが現れないと考える方が不自然だよ……鳩○邦夫議員も出席するしな……」

 鳩○議員はさまざまな大臣を歴任した大物、元ライダーガールズの一人、エミを婦人に持つばかりでなく、法務大臣時代にショッカーの犯罪には特に厳しく対処したことで恨みを買っているのだ。

「われわれも極秘に警備に当たろう」
「ああ、しかし、君にしても私にしても、そして仮面ライダー・マッスルにしてもショッカーに顔が割れているぞ」
 
 仮面ライダー・マッスル、本名 納谷剛。
 お察しの通り、マスクド・アンショッカーの新しい名前である。
 無事に自動二輪免許を取得し、優れた科学者である結城丈二の設計、立花レーシングの技術力による愛車、GO-ON号も与えられた。
 常人の八倍とも言われる怪力とプロレスで鍛えた必殺技の数々、そして、その場にあるものを臨機応変に凶器として使う機転にも優れた、豪快な新ライダーである。

「お二人とも、コーヒーをどうぞ」
「ああ、ありがとう」
「志のぶさんのコーヒーは最高に美味いよ」

 マッスルの愛妻、志のぶ。
 今は剛とともに立花レーシングに住み込み、主に調理を担当している。
 味が抜群なだけでなく、栄養面、体調管理面まで心配りが行き届いたその料理は、今や立花レーシング=ライダーチームにとって不可欠、それはもはや戦力のひとつと言っても過言ではない程だ。

「お話、聞かせていただきましたよ」
「自○民○党大会の話?」
「ええ、私ならショッカーにも顔は割れていませんことよ」
「確かにそうだけど……」
「見くびって頂いては困りますわ、こう見えてもくノ一の末裔ですのよ」
「え? 志のぶさんが?」


 前回のエピソード、志のぶは百一歳で亡くなった祖母の形見分けとして、忍術の巻物を貰い受けた。
 親戚の誰もが本気にせず、ユーモアあふれる人だったおばあちゃんの冗談だろうと思っていたようだが、志のぶには、祖母がくノ一ではなかったのかと思い当たるふしがあったのだ。
 持ち帰って巻物を最後まで開いて見ると、一通の手紙がはらりと落ちた。

『この巻物を手にしたのはきっと志のぶだろうね、あたしはそう信じてるよ』
 手紙はそのように始まっていた。
(おばあちゃん……)
 志のぶは手紙をそっと胸に押し当てると、続きを読み始めた。
『お前には判るね? そう、あたしはくノ一の末裔だよ、そしてこの巻物はその秘伝の書、あたしも母親、お前のひいおばあちゃんを飛び越して、祖母、お前から見ればひいひいおばあちゃんから受け継いだんだよ。 あたしだって大正生まれ、最初はこんな術が必要なんだろうかと思ったよ。 でもね、実際には役に立った、お前も覚えがあるだろう? 川で溺れかけた時、イノシシに襲われそうになった時、猟師の流れ弾が飛んで来た時、お前を守ってあげることが出来たのはこの術を身に着けていたからだよ、お前だけじゃない、みんなは気がついてはいなかっただろうけど、危険を察知して遠ざけることで子供や孫を守ってきたんだよ、忍術はなにも戦うためだけにあるんじゃない、自分の身を、そして大切な人を守るためでもあるんだよ、だから、きっと受け継いでおくれ、いつか必ず役に立つよ、そして、お前の子供でも良い、孫でも良い、未来に引き継いでおくれ……頼んだよ、(*^3(*^o^*)チュッ♪』

 キスマークの顔文字にはズッコケたが、ユーモア一杯だったおばあちゃんらしい……。
 そして、この秘伝を受け継ぐのは今を置いて無い。
 自分の大切な人ばかりではない、世界平和を守るためにも、今こそ必要な術なのだ。
 自分の今の境遇を考えると、このタイミングで巻物を手にしたのが偶然とは思えないほどに。


「へえ、こんなものが存在していたとは……」
 結城丈二は実に興味深げに巻物を眺めている。
「いや、これに記されている忍術やトレーニング法は実に効率的だよ、科学的と言い換えても良いくらいだ、志のぶさんはこのトレーニングを?」
「はい、この三ヶ月ほどですけど……まだ格闘術や手裏剣の極意は身につけていませんけど」
「その成果を見たいな……」
「見ててください」
 そう言うと、志のぶは窓からひらりと身を躍らせた。
「あっ、ここは三階だぞ!」
 隼人と丈二があわてて窓に駆け寄る。
 しかし、その心配を他所に、志のぶは音もなく着地してにこやかに手を振った。
「驚いた……本物だよ……」


「志のぶさんがくノ一の末裔で、常人離れした能力を身につけているのは認めるよ、すばらしい戦力になると思う、しかし、相手はショッカーだ、危険ではないのかな? まだ格闘系の修行は未完成だと言うしな」
 立花のおやっさんは慎重だ。
 立花レーシング=ライダーチームの会議、議題は志のぶを今回の武道館警護のメンバーに加えるかどうかだ。
「志のぶさんの身を一番案じているのは剛君に違いないよな、君の意見はどうなんだ?」
「心配じゃないと言えば嘘になります……でも、志のぶは役に立ちたいと強く願っていますし、こいつ、こう見えて強情なんですよ、言い出したら聞かないんです」
 剛は肩をそびやかした。
「なにしろ、親兄弟だけじゃなくて親類一同の反対を押し切って俺と結婚しちゃったくらいですから」
 自分で言っておいて、大いにテレて頭を掻いているのがこの男らしい。
「剛君は、志のぶさんをメンバーに加えても良いと?」
「ええ、志のぶは何があろうと俺が守りますから」
「しかし、武道館は広いぞ、常に一緒というわけには行かないだろう?」
 その問いかけには志のぶがにこやかに答えた。
「大丈夫です、私が心の中で助けを求めれば、必ず彼に届きますから」
「それも忍術のひとつ?」
「いいえ、『愛』です」
 志のぶは剛に軽く抱きつきながらきっぱりくっきりとそう言った。
 剛もテレまくりながらも同じことを口にする。
「なんか、俺たちの間ではテレパシーが働くらしくて……」
 こうまで言われれば認めない理由はない……。
「ならば、これを志のぶさんにプレゼントしよう」
 結城が紙袋を差し出す。
「なんですの?」
「周囲の色に同化する忍び装束だよ」
「え? 本当ですか?」
「ああ、ただし、完全に同化して見えなくなるわけではないし、同化するにはタイムラグもある、見つかりにくくなる程度だと思ってくれ」
「早速着てみても?」
「もちろんだよ」
「では、ちょっと失礼……」

「おお」
 戻って来た志のぶを見て、一堂は思わず感嘆の声を上げた。