赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 16話から20話
肩揚げと袖揚げを施した振袖の着物に、赤い刺繍の半衿。
ぽっくりの下駄に、少女向きの日本髪。
桃割れや唐人髷、結綿、割れしのぶ、おふくといった髪型に、
花かんざしで、幼さを強調したいでたちが、年少芸妓たちの大きな特徴。
関西では彼女たちのことを「舞妓」と呼び、
それ以外の地域の花街では、「半玉」と呼ぶのが一般的。
山形県の酒田では、若手芸妓たちのことを「舞娘」と呼んでいる。
「きらり妓さん」(神奈川・箱根湯本温泉)と呼ばれたり、、
会津東山温泉と同じように、「からり妓さん」と呼んでいる地域もある。
東山温泉にいる春奴母さんの2番弟子の小春は、鳴り物
(三味線を除く楽器、笛と打楽器の総称)の名手。
多くの画人や文人が、東山温泉へやってきた。
竹久夢二は、3度もこちらへ逗留している。
その時に描いた美人画が、いまも旅館に残されている。
温泉街には、夢二が作詞した「宵待草」の歌碑も建っている。
手塚治虫が愛した地でもある。
よほど気に入ったのか、相次いでこちらへ足を運んでいる。
昭和34(1959)年。少年サンデーに掲載された「スリル博士第4話」は、
ここで描かれたというエピソードが残っている。
『でもね、お母さん』
お化粧を終えた小春が、怒った顔で、くるりと一同を振り返る。
東山温泉にほど近い小春のマンション。
昼食会のお座敷に呼ばれているため、先程から小春が身支度の準備で、
大わらわの状態を続けている。
「来るなら来るで、前もってお電話くださいと、あれほどお願いしたでしょう。
それに、一体なんなのよ。
ウチの足元を、ドタバタ駆け回るこの小猫たちは。
たまが来るだけならまだしも、真っ白のオマケまで連れて来るなんて。
聞いていません、そんなお話。
だいいちお座敷まで、もう時間が無いのよ、
お願いだから、身支度の邪魔をしないでくださいな、2匹とも。
あんたたちは暇を持て余しているけど、からりの姉さんは、
お昼からのお座敷で、とにかく多忙なの!」
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 16話から20話 作家名:落合順平