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赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 16話から20話

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 『ちゃりをいれるな。話の腰を折るんじゃねぇ。
 平家部落の見学を終えて、出発してすぐ、まもなくのことだ。
 トイレに行きたいと、わがまま娘が騒ぎ始めた。
 なにしろ。親が溺愛しているひとり娘だ。
 甘すぎる親だ。なにかにつけて過保護にしたがる傾向がある。
 ドアを開けっ放しにしたまま、娘をコンビニのトイレへ連れ込んだ。
 仕方ねぇなぁと思いながら、おいらは高みの見物をしていた。
 座席の端っこで一人ぽっちのまんま、家族の帰りを待っていた』

 『別に問題ないじゃないの。それだけのことなら。
 座席でおとなしくしていたあんたが、なんで迷子になってしまうのさ?』

 『ひとこと多い女だな。おまえってやつも。いいから先を聞いてくれ。
 油断しきっていた、そんときだ。
 どこかの悪ガキが、『猫が居た!』と、ヒョイとおいらの
 背中をつまみやがった。
 あっというまに抱き上げられた。
 おいらを抱っこしたまま、ドンドン車から離れていきやがる。
 さすがに『これは、やばい』と危機感を感じた。
 さいわい、悪ガキの親に発見されて、『返して来い』という騒ぎになった。
 やれやれ、これで無事、家族が待つ車へ帰れると安心していたら、
 悪ガキのやつ、途中で、俺様を放り出しやがった。
 『ちゃんと元の所へ返してきました!』なんて、
 ぬけぬけと親に報告している』

 『それじゃ事件じゃないの。誘拐未遂と、命令放棄の2本立てだわ!』

 『どこを見回してみても、見えるものといえば、車のタイヤと
 人の足ばかりだ。
 途方にくれたさ。もとに戻れる可能性はゼロだ。
 探すことさえあきらめた。
 日が暮れると、あんなに大勢いた観光客も誰も居なくなる。
 軒下に潜り込んでウトウトしていたら、人が通りかかった。
 下駄を鳴らして、いい匂いのする女がひとり、
 オイラの目の前を通りかかった。
 一瞬だけドキリとしたが、近くでよく見るとこれが、
 とんでもないババァだった・・・・』
 

 『その女の人が、いまの飼い主、春奴お母さんというわけですね。
 不幸な事件がなければ、今頃あなたはどこかで三毛猫のプリンスのまま、
 優雅な人生を送っていたはず。
 でも結果的にその悪ガキのおかげで、私たちはこうして巡りあえた。
 因縁を感じますねぇ、あたしたち。
 やっぱり。運命の出会いなのかしら、わたしたちって』

 『おう。まったくもってそのとおりだ。
 こうしてみると、迷い猫の生き方ってのも、
 まんざらじゃねぇ気になってきた。
 お前さんという絶世の良い女にも巡り会えた。
 それじゃ、よう。そろそろおっ始めようぜ。俺たちの子作りっを』

 『あら。それとこれとは、別問題です!。うふっ』


 あっさり拒否されてしまったたまが、清子の懐でションボリとうなだれる。
『うふふ。お気の毒様』、ミイシャがペロリと、たまに向かって舌を伸ばす。
ソフトなタッチの毛づくろいが、たまの首筋の周辺ではじまる。

 『う、う・・・・そこ。そこが、おいらの性感帯・・・・』


 『ド変態、もう、知らない!』ピョンと懐を抜け出したミイシャが、
清子の肩へ、ふわりと飛び乗る。
そのまま清子の頬へピタリと寄り添う。
『おやすみ』とたまへウインクを見せたあと、両目をしっかり閉じてしまう。

(18)へ、つづく