赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 16話から20話
気がついた清子が、ミイシャの真っ白い体を抱き上げる。
たまと反対側の懐へ、顔だけ残して差し入れる。
そのまま後部座席へもたれかかり、またウトウトと眠りに落ちていく。
顔だけ出した2匹が、進行方向の正面をジッと静かに見つめている。
三毛猫(みけねこ)は、3色の毛が生えている猫の総称。
白・茶色・黒の3色で、短かい毛を持っている日本独特の猫のことをいう。
白・茶色・こげ茶のものは「キジ三毛」と呼ぶ。
縞模様が混合のものを「縞三毛」と区別して呼ぶことある。
福を招くとされ、『招き猫』の代表的な色合いとしてよく知られている。
三毛猫の性別は、ほとんどがメス。
ごくまれに、1000匹に1匹程度の割合でオスの三毛猫が誕生する。
オスの三毛猫の誕生はそれだけで話題性がある。
地元のテレビ番組に取り上げられたり、新聞記事になることもある。
ただし。オスの三毛猫が交配しても、オスの三毛猫の子猫が生まれる確率は
統計上と変わらない。
オスが生まれる確率は、つねに奇跡的な数字。
福を招く三毛猫を船に乗せると、船が遭難しないと信じられている。
特にオスの三毛猫は希少性が高い。
ゆえに、さらに福を呼び船が沈まないと江戸時代、船頭たちのあいだで
きわめて高値で取引されていた。
日本の第1次南極観測隊は、珍しくて縁起がいいという理由から、
オスの三毛猫のタケシを同行した。
昭和基地内のペットとして、南極での越冬を体験してしている。
『で。それほどまでに貴重なはずの三毛猫のオスのあんたが、
なんで湯西川の置屋で、ウロウロ暮しているのさ?』
『住みたくて、湯西川へ居るわけじゃねぇ。
よんどころのねぇ事情がある』
『迷子になったんでしょ、生まれて間もなく?』
『人の話は最後まで聞け。
おいらが生まれたのは、さるお大尽(だいじん)のお屋敷。
那須の別荘へ静養に行く途中。突然、平家の落人集落へ行くことになった。
言い出したのは、ひとりっこのわがまま娘。
この娘のひと言が、おいらの不運のはじまりを生んだ』
『あんただって相当のわがまま猫だと思うけどね』
作品名:赤襟の清ちゃんと、三毛猫のたま 16話から20話 作家名:落合順平