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銀の錬時術師と黒い狼_魔の島

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「……いいだろう。それでおまえが満足するなら」
「はい」

 術式陣の線描を消さないよう、場所を変えた。
 かろうじて残った屋根の下の、薄日の射さない日陰を選ぶ。
 陶器の破片を片づけ、まだ使えそうな毛布を何枚も敷く。それで多少はマシになった。
 カミアを毛布の上に押し倒し、無防備な唇を奪う。銀色の唾液の糸がふたりの唇と唇を細く結ぶ。
 カミアがターロンの耳たぶを甘がみした。
 ターロンがハッとして首をすくめる。
「痛かったですか?」
「……いや。昔、ほかの女にも同じことをされたよ」
「いまだけはほかの女のことを考えないでください」
「嫉妬か?」
「はい。わたしはこう見えても嫉妬深い女なのです」
「気をつけよう」
 互いの服を脱がせる。
 儀式めいたぎこちない動きで、男と女は肉体をまじえる。
 首や手足のない朽ちかけた木像の群れが、ふたりの愛し合うさまを黙然と見届けていた。