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銀の錬時術師と黒い狼_魔の島

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 秘密の通廊はごく短かった。百歩も歩かないうちに四角く光る扉に行きあたる。扉をくぐると、そこはもうジスラの〈城〉の内部だった。
 半裸の黒髪の青年が沈痛な表情で扉口に立っていた。レギウスとリンが使った部屋とは別の客室に案内する。
 ジスラが腕組みをして廊下に仁王立ちしていた。レギウスと目が合い、ジスラが縦長の瞳を細める。
「あなたがいながらどうしてこんなことになったのかしら?」
 レギウスはなにも言い返せない。リンに反撃を封じられたとはいえ、彼女が深刻なダメージをこうむったのは事実だ。屈辱、無力感、後悔──吐き気がするほどの忸怩(じくじ)たる気持ちで胸のなかがいっぱいだった。
「ローラン殿下のお身体、きれいに洗ったほうがいいですわ。わたくしが洗ってさしあげましょう」
「……そうしてもらうと助かる」
 背中から下ろしたリンをジスラが両腕で抱きかかえる。生気にとぼしいリンの顔色をのぞきこみ、ジスラが眉を曇らせる。
「大量の竜鱗香を飲まされたようですわね。それにこのにおい……腐毒のにおいですわ! まあ、殿下になんという仕打ちを! 赦せません!」
「すまない」
「謝罪する相手が違うのではなくって? あなたは自分の部屋で休んでいなさい」
 レギウスに冷たい一瞥(いちべつ)をくれると、リンを抱えたジスラは廊下の先の角を曲がって姿が見えなくなった。レギウスの視野の端で、金髪の青年と黒髪の青年が顔を見合わせる。レギウスに声をかけたのは黒髪の青年のほうだった。
「さあ、こちらへ。あなたも相当ひどいかっこうですよ。身体を洗って着替えたほうがよさそうですね……」