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感染

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第三章クルクルパー2




調子が狂う


こんな筈では
なかった


どちらかと言えば
有能な社員だったはずだ



たった一日
会社を無断欠勤したばかりに
上司から拳で額を殴られ



落ち零れの烙印を
喰らう嵌めになった




恐るべし
クルクルパーウィルス



何故 俺が
クルクルパーの餌を
買わなくては ならないんだ



不覚



何故 俺の目に
部屋の中をうろつく
クリーニング仕上げの
ワイシャツを着ている
馬鹿が映っているんだ



錯覚



何処からか
妖怪の声が聞こえる
聴覚まで イカれたか




「おかえり~」

「死ね!」




320円の海苔弁が
宙を舞った




レジ袋から飛び出し
裏返った弁当を拾い
戸惑いもなく差し出す
クルクルパー


「はい」

「俺が食うのか?」

「3秒以内だからセーフ」


裏返したまま
テーブルに弁当を置き
レジ袋に残った弁当の蓋を開け
眉を寄せるパー


「また海苔弁?」

「白飯にするぞ」

「海苔に隠れた昆布が嫌い」



おかずを蓋に移し
海苔を剥がすクルクルパー
白飯に敷き詰められた昆布を睨む


「お前のアソコと一緒だな」

「これ?」


ワイシャツの裾を捲り
下半身丸出し部分を覗き込む


「………最悪」

「こんなに濃くないよ」

「死ね!!」


艶々と黒光りした昆布を箸で掬い
クルクルパーの口の中に
詰め込んだ



手足をバタつかせ
もがきまくる
パーの頭と顎を鷲掴み



「飲み込め」



声にならない
呻き声が漏れ



クルクルパー
大股開きの抵抗
柔らかな腿を揺らし
膝蹴りが脇腹に
容赦なく喰い込む



「…飲み…込め…」

「……無…理ぃぃ」



両者引き分け



流し台に昆布を吐き
身を乗り出して
水道水を夢中で飲む
クルクルパー


尻を突き出す
爪先立ちの長い脚


脇腹を抱え
パーのワイシャツを
捲り上げた



「パンツ履け」

「洗濯物の中にないんだもん」



確か
下着らしき物体を
ゴミ箱に投げ捨てた
記憶がある



ま…この際
どうでもいい




相変わらず
感度だけはいい
クルクルパー


流し台についた
ワイシャツの袖口が
水浸しになる


小刻みな可愛い
喘ぎ声



「昆布 嫌~い」

「安心しろ 明日から
 インスタントラーメンしか
 食わせねぇ」



給料日まで
あと7日



残金7千円
一日千円七日間戦争勃発


煙草代差費引き


正確には
580円戦争


テーブルに置いた
残金7千円の前で
腕組をする俺



食い尽くした弁当箱を
ゴミ袋に捨てる
クルクルパー


「箸は捨てるな」

「なんでぇ」

「洗って使う」

「……貧乏臭」



細いクルクルパーの
首を鷲掴み
力づく左右に振る


「働きやがれ!」

「パンツないもん」


…仕方ない
百均一に行こう


黒いワンピース一枚
貧弱なボディーラインの
クルクルパー


こんな格好を
していたのか



夜道に咲く
一輪の雑草


小さなハート型の葉を
可愛く揺らす
ペンペン草


「スースーする」


サンダルを鳴らし
走り出す後ろ姿は



ただの
ノーパン女



夜間9時まで営業
スーパーマーケットに隣接する
大手百円均一店


歯ブラシやら
化粧水やら
細々しい物品を漁る
クルクルパー


数枚の下着を含め
合計金額が千円を越え


泣き泣き商品棚に
箸を返しにゆく



どうしても
アイスが食べたいと
悲願するパー



渋々 財布を渡すと
軽快な足取りで
隣接スーパーへ
吸い込まれて行った



百均の駐車場
金網フェンスと
コンクリート



煙草の吸殻二本と
ガス欠の使い捨てライター



くわえ煙草に
火花散るライターを
添える



煙草に火が灯る迄の
財布在処賭博


消音するネオン看板
蛍の光が微かに流れ


自動ドアから
クルクルパーと
棒付きアイスが
吐き出された



賭博勝利



クルクルパーから
財布を奪い取り
ホッとしたのも束の間


パーの片手に
意味不明の物体が
握り絞められている



「…おい」

「可愛くない?」



得意気に見せびらかす
カントリー柄の
青いフライパン


急遽 財布確認


結果 残金千円札一枚



「結構高いね フライパン」



財布を地面に叩きつけ
暴発寸前の遠吠えが
月夜に響く




「五千円使いやがるなら
 エロパンティーにしろ!」



崩壊


テーブルに並べた
捻り潰した煙草


楊枝に刺すシケモクを
吸いながら
小さく丸めたパンツを
パーの頭に投げ付けるたび


ポコンと跳ね返り
やる気なく転がってくる



「フライパンは凄いんだよ」

「あぁそう」

「何でも料理出来るんだから」



転がったパンツを拾い集め
パーの顔面に投げつけると
フライパンでガードする



「便利だね フライパン」



意気消失



点滅しているはずの
電話機が静止する



「留守電 聞いただろ」

「うん」



テープを巻き戻すパーが
再生ボタンを押す手を止め
パーを羽交い絞めにする



「…聞かないの?」

「ん」

「別れた彼女?」

「知らない女」



丸めたパンツを分解し
パーの頭に被せた


「玉子」

「あ?」

「目玉焼きが焼けるね」




「……朝昼抜きならな」



消沈



更に
こんな筈では
なかった


空腹による
脳停止


出世街道から
獣道に迷い込む




咳払いをする上司
背後から
ただならぬ憎悪が漂う



資料作成中の画面が
将棋盤に摩り替わっている



鈍い音が
フロアーに響き渡り
殴られた頭を抱え
デスクに捻じ伏せられた



詰めが甘い
詰め将棋



王手ではなく玉砕



白飯と白い玉子



白いワイシャツに
白パンツ



そして
青いフライパン



ガス台の前
仁王立ち
クルクルパー



得意気に振り返るパーが
満面の笑みで微笑んだ



「目玉焼きって どうやるの?」



倒れ込んだ掌から
丸めたパンツが
転がり落ちた



「返品してこい!」






やはり返却すべきだった
延滞料金が加算される前に


作品名:感染 作家名:田村屋本舗