ヒトサシユビの森 4.クスリユビ
安田の携帯電話に着信を知らせる表示が点灯した。亮太からだった。
亮太は、安田が電話に出るといきなり大きな声で話し始めた。
「話が違うだろ。どうしてかざねが逮捕されなきゃなんねえんだ? あんたを信用して相談に行ったんだ」
「山本さん、申し訳ない。かざねさんに不利な証拠が揃った」
「不利な証拠? 全部状況証拠ってやつだろ。いつどこでどんな方法でやったとか、何ひとつないだろうが」
「その通りだ。この逮捕は私も不可解な点を感じている」
「不可解? 不可解で人が逮捕されていいのか」
「どうしようもない。警察という組織で動いている」
「なんだ、その言い草は。あきれてものが言えんわ。それで、安田刑事。あんたはかざねが犯人だと思っているのか」
「いや、容疑者の段階だ」
「もし俺が真犯人を知っているって言ったら、安田刑事あんたどうする?」
「真犯人を知っているのか?」
「まだ仮定の話だよ。でもそのうちはっきりさせる」
「情報があるなら教えてくれ」
「小屋に子どもが閉じこめられてる」
「子どもって、誰だ」
「わからない」
「小屋はどこにあるんだ」
「わからない」
「わからないだらけだな。情報源はどこだ?」
「今は言えない。もしわかったら安田刑事、協力してくれるよな?」
作品名:ヒトサシユビの森 4.クスリユビ 作家名:JAY-TA