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ヒトサシユビの森 3ナカユビ

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いしづか道の駅は開業初日を終えて、広場の外灯照明は僅かな誘導灯を残してすべて落とされた。
建物内では初日の集計と2日目の準備で未だ多くの関係者が残って働いていた。
それとは対照的に表の広場は潮が引いたように静かで、時折吹く強い風に落ち葉や紙ゴミが舞った。
道の駅の前面道路で、かざねは亮太と落ち合う約束をした。
かざねがミニローバーの中で待っていると、そのすぐうしろにワンボックスカーがライトを消して停まった。
車から降りた亮太はかざねの車の助手席に乗りこんだ。エンジンをかけたたままふたりは小一時間話をした。
「かざねの頼みなら、何だって聞いてやるぜ」
フロントガラス越しにショッピングセンターを仰ぎ見ながら、かざねは亮太に言った。
「ありがとう。亮太だけよ、そんなこと言ってくれるの」
「お、やけにしおらしいな。東京でさんざんいい男を見てるから、俺みたいな田舎男は用済みかと思ったよ」
かざねは当惑して俯いた。
「冗談だよ、冗談。いやこんなときに冗談言ってる場合じゃないな。ていうか、かざね。俺が言いたいのは、迷子の子どもがいたら普通誰でも心配するだろ、って話」
かざねは吐息をついて亮太に向き直った。
「でもね、世間は子どもがひとりいなくなったくらいじゃ、誰も関心を持たない」
「そんなことあるもんか」
「人はその先のもっと悪い結末を期待してるの」
「つまらん奴らは放っておけばいい。とにかく捜さなきゃ。えっと名前、何て言ったっけ?」
「いぶき」
「そうそう、いぶき。ここに来るまで夜道を歩いてないか、捜しながら来たんだけど、いなかった。ところでかざね、警察には届けてあるんだろうな、失踪届だったか捜索願だったか」
「いいえ・・・」
「えっ? 出してないのか?」
「うん、自分で捜すから」
「おい、自分で捜せないから、俺呼びだしたんだろ」
「警察は嫌い」
「好きとか嫌いとか言ってる場合か!」
「警察に行きたくない」
「好き好んで行くんじゃない。いぶきを本気で見つけたいんだろ、かざね。今晩ふたりでいぶきを捜して見つからなかったら、警察の助けを借りる。いいな」
亮太の熱弁に、かざねは目を細めた。
「何が可笑しい?」
「亮太、少し大人になったなぁって」
「バカ、俺お前より年上だぞ」