詩篇天竺浪人
たましい
海で死んだ子のたましいは
「暗い、暗い」と泣きながら
水の底をただよいます。
やがて潮がみちるとき
海で死んだ子のたましいは
あぶくとなって浮きあがり
ぱちんとはじけて霧となります。
そのまま月夜にのみこまれ
雲のうえで目ざめたら
まばゆい光につつまれて
天使がむかえにくるのです。
山で死んだ子のたましいは
「寒い、寒い」と泣きながら
夜露となって輝きます。
やがて朝日がのぼるころ
山で死んだ子のたましいは
かわいた風にはこばれて
くるくるお空へまいあがります。
そのまま街を見おろして
風に吹かれているうちに
いつしかせなかに羽がはえ
天使となって飛ぶのです。
生まれずに死んだ子のたましいは
「恋し、恋し」と泣きながら
母のおちちを探します。
やがて水辺にたどりつき
生まれずに死んだ子のたましいは
お地蔵さまに背おわれて
すやすや寝息をたてはじめます。
そのまま夢のゆりかごで
まだ見ぬ母の子もり唄
きいて安心したならば
天にのぼってゆけるのです。